著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通経済大学論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.p49-60, 1986-03

モンシロチョウ第四世代の寄主選好性と不完全発生の実態を調べるため,北海道大学構内に生育している10種類の植物-ツケナの2品種(バカラシナ,シガツシロナ),キャベツ,キレハイヌガラシ,ハルザキヤマガラシ,ダイコン,カブ(サッポロムラサキ),コンロンソウ,ノウゼンハレン,スカシタゴボウ-を同構内に設けた実験区に移植あるいは播種し,そこに発生したモンシロチョウの個体数を発育段階ごとに1975年の9月10日から11月7日まで調査した。それぞれの実験植物について,個体数の変化,寄生密度,生命表,発育期間,生存曲線が明らかになった。1.寄主1m^2あたりの卵密度は0〜33.3,5齢幼虫密度は0〜1.5であり,スカシタゴボウ,キレハイヌガラシおよび秋蒔きの栽培性アブラナ科植物が第四世代の寄生対象として重要である。2.蛹化個体はいずれの寄主でも得られなかった。9月〜11月の温度条件から考えて,第四世代で越冬蛹となり得る個体は,9月10日〜9月15日の間に産卵されたものだけであると判断された。3.寄生小区数,寄生密度,生存率,発育期間を基準にして,キレハイヌガラシを第四世代の好適寄主と判断した。4.札幌周辺域にみられる第四世代の不完全発生は,年4回発生を常態とする隣接個体群からの遺伝子の流入による可能性が高い。