著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通経済大学論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.p46-54, 1986-12

札幌周辺域で,キレハイヌガラシ(Rorippa sylvestris)を共通の食草とする同所性モンシロチョウ属の2種,モンシロチョウとエゾスジグロシロチョウとは,1日当りの1雌産卵数を決定する要因が異なっている。モンシロチョウは,気温や日射が極端に悪い条件でない限り,産卵数は日齢によって決められていて,気象条件の影響を受けない。このため,このチョウは,生理的限界に近い多数の卵を産むことができる。一方,エゾスジグロシロチョウの産卵は,気象条件,特に気温と日射時間によって大きく影響される。このため,1雌が一生の間に産み出す卵数は,その生理的限界をかなり下回ることが予想される。両種ともに,開けた,環境的に不安定な場所を生息地としているが、産卵数に関しては,モンシロチョウの方が,安定多数を保つ機構を備えていることを示唆している。
著者
大谷 剛 山本 道也
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.43-76, 1985

第1報の行動目録(OHTANI,1985)にある主要な行動型について,生態学的な側面から分析を試みた(行動型のリストはTable1).観察したフィールドは北海道大学の構内(Fig.1)で,そこで個体追跡したのは31個体である(Table2).私たちが採用した「1個体追跡法」では特別な記録用紙(5秒間隔のスケールが横1列に60個並んで5分,全体で1時間のもの)を用いている.記入の手順は次のとおり:観察している個体の行動が変化したとき,すばやく時計の針の位置を確認,続いて記録用紙の相当する場所に縦線を入れ,すばやく行動型の略号を書き入れる.「結果および論議」では7節に分けたが,まとまりのある結論に至ったところで,「まとめ」を挿入した.これが斜体で書かれたS-1-S-11である.S-1:オスは白っぽい植物上で休息し,メスは産卵植物上で休息する傾向がある.Table3にはモンシロチョウが休息したときの植物とその回数を示してある.世代ごとに雌雄の休息回数の比率を比較してみると,S-1の傾向が読み取れる.S-2:オスはメスよりも高い位置で休息する.Table3の第3グループは白っぽい植物でも産卵植物でもないが,オスが多く休息するのは丈の高い植物,メスは低い植物の傾向がある.そこで,雌雄各1個体で休息位置の高さを測定(目分量)した例をTable4にまとめた.同じ植物(アカザ,C.album var. centrorubrum)でもS-2の傾向が明らかである.S-3:吸蜜の際,オスはメスよりも花にとどまる時間が短い.吸蜜植物に関する情報はTable5に集めた.吸蜜した回数(V)と総時間(D)に分けてある.各世代のものを総合して平均吸蜜時間(D/V,右端の欄)を出すと,S-3の傾向が認められた,詳しく見ていくと,S-1,S-2の傾向も存在する.S-4:飛翔(FL)の継続時間は,産卵メス,非産卵メス,オスで大きく違い,また,メスの越冬世代(G_h)では第一,第二世代(G_1,G_2)より長くなる傾向にある.Fig.2に飛翔の継続時間の分布を示した.探雌飛翔(Ff),逃避飛翔(Ef),移動飛翔(Wf)の3つは記録紙から分けて取り出すのがかなりむずかしいので,Fig.2では混ざったままになっている.オスの飛翔の大半はFfなので,30秒以上のものが多く,非産卵メスでは,あまり動く必要がないので,短いWfが多いと考えられる.産卵メスでは産卵植物への移動がやや長いWfを必要とする.「吸蜜→飛翔」(Fig.2右)の場合は「休息→飛翔」(Fig.2左)の場合より花から花への短い移動を含むので,分布は左側に偏っている.メスの越冬世代の飛翔時間の長さには春の植物の少なさが関連すると考えられる.S-5:飛翔オスは白っぽい物体に引き付けられる.飛翔中のオスは,枯れ葉・タンポポの綿毛・ネギぼうず・ビンの白い蓋など白っぽいものに興味を示して近づき,ときにはちょっと触ったりする.S-6:個体間行動をみると,若い個体は飛翔中の反応が多く,老齢個体では休息中の反応が増える.とくに,老齢メスでは尻あげ反応(Ae)が増加する.Table6は,個体間行動の観察回数を日齢別にまとめたものである.追尾(Ch/),被追尾(/Ch),回転(Gy),上昇飛翔(Af)という飛翔中の行動,および,飛び立ち反応(To),傾き反応(Le),尻あげ反応(Ae),翅閉じ反応(Wd),はばたき反応(Ft)という休息中の反応は,それぞれ雌雄とも日齢を7日で分けると,違いが出てくる.S-7:上昇飛翔(Af)は若い雌雄によって行なわれ,これが若いメスの羽化地からの移出につながるものと考えられる,すなわち,若いメスは老齢メスよりAfをするので,定住的なオスに追い出される格好となる.Afの情報はTable7にまとめた.♂11を除くと,雌雄ともAfをした平均日齢は3.6日であり,時間も午前中が多い.表の右側はAfの前後の行動の流れ.Ch→Af→FLの形をとることが多い.また,Afのあと視界から消えた4例も示してある(→oversighted).S-8:メスは,接近してくるオスに気づかれなくとも,翅閉じ反応(Wd)と傾き反応(Le)をする.生スが気づいて25cm以内に接近すると,メスは尻あげ反応(Ae)に切り替える.休息しているメスに頻繁に見られる3つの反応が引き起こされる距離をTable8に示した.3つの反応に属さないわずかな動き(twitching)と反応があるべき距離の無反応(no response)も示してある.WdとLeの翅の動きがAeと全く違うので,どちらの反応にすべきか迷う場合もあると考えられる.不完全な反応の例を()内に示したが,Aeの不完全なものは完全なものより遠い距離で生じているので(中央値,5.4cm:19.3),判断の迷いが現れたものとみなした.S-9:個体間行動が生じる頻度は,3つの世代ともオスの場合の方がメスよりもずっと多く,オスの活動性の高さを物語っている.各行動型の頻度を世代で比べると,総個体数の変化(G_h<<<G_1≧G_2)と必ずしも一致しない場合がある.G_1とG_2のオスの行動に差があると予想される.個体間行動ではS-8で見たように日齢で影響が出るので,少ない老齢個体データを省き,世代間の違いをTable9(不活動時の個体)とTable10(飛翔時の個体)に分けてまとめた.各世代の比較は,Gの観察総時間を1.00としたときの比を他世代で出し(Table9,10のm),それで観測数を割ったもの(括弧内の数値)で行なった.また,総観測数に対する%でも比較した.S-10:交尾中に接近してくるオスは交尾時間を引き伸ばす原因となるが,飛来するオスが少ないうちは,交尾オスのはばたき反応(Ft)は追い払う効果をもつ.交尾に関する情報は,1976年のデータが少なかったので,1980年に同じ北大構内,1981年に長崎県北松浦郡田平町で追加したものを一緒にしてTable11に示した.交尾を邪魔された指標として,はばたき反応の回数(NFt),結合飛翔に飛び立った回数(Nbf),結合飛翔の総時間(Dbf)を調べたが,交尾時間(DC)との相関係数はNFtが最も高かった(r=0.9055).しかし,NFtが25以下の18例で相関係数を出して見ると,r=0.2825となり,ほとんど相関はないといえる.これを,25以下ならはばたき反応が飛来オスを追い払っている結果と解釈した.Fig.3の写真は,SUZUKI et al.(1977)が報告したスジグロシロチョウの「求愛ホバリング」に似たものとして掲げた.S-11:メスは多くの卵をつぎつぎと広い範囲に産んでいくが,G_2のメスではこの傾向が弱くなる.17個体のメスの産卵についてはTable12に示した.1時間当たりの産卵数(A),1回の産卵行動(El)に費やされた平均時間(B),1時間当たりのElの数(C),1回のElに産まれた卵の平均数(D),1時間当たりの「空産卵」の数(E)を調べ,AとB-Eとの相関係数(CC)を一番下に示した.CとDの間は,1回のEl中に産まれた卵数(1-14)で,それに相当する1時間当たりの例数である.1回のElで1個しか産まないときより,2個,3個と産む場合の方が相関係数が高い.つまり,Elを始めたとき,何個も産む個体の方が多くの卵を産むようである.また,A,B,Dについて世代の集計のところを見ると,G_2の数値がG_h,G_1と違っている.以上のS-1-S-11を踏まえ,総合考察をして,Fig.4に仮想的なモンシロチョウの生活をまとめた.オスの生活はほとんどすべて「メス捜し」にあてられている.しかも,できるだけメスに近いものに引き付けられるために,メスの次によく似ているオス同士で引き合うことになり,これが前から知られている「オスの定住性」につながるものと考えることができる.一方,メスは交尾のときオスに出合うだけでよく,交尾以外のオスをなるべく避けるようにしている.つまり,「オス避け」または「交尾避け」生活である.そして,若いメスは上昇飛翔(Af)でオスを避ける傾向にあり,その結果メスは羽化地をどんどん離れていくことになる.そして,老齢になるに従い,尻あげ反応(Ae)でオスを避けるようになるので,新たな生息地に落ち着くことになる.このように,オスの生活とメスの生活が組み合わさって,メスを初めの生息地から移動させるという構造を作り出し,それが,すばやく多くの卵をばらまいていく移動中のメスの特性とともに,不安定な環境をうまく利用するモンシロチョウの生活を構成している,と考えられる.
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.191-206, 2009-03

1992年3〜11月に行われた1旬につき2回,計54回の2.5Km-帯状センサスにより,茨城県竜ヶ崎市近郊(竜ヶ岡)では,7科43種2,457個体のチョウが目撃され,群集構造,種数個体数多様性,優占種の季節変化について解析が行われた。以下はその結果である。1.総目撃個体数6以上のチョウ32種の27の調査季節への個体数分布マトリックスに,群分析と主成分分析を併用して二つの群集と,二つの活動季節を分類した。2.3月上旬〜8月中旬には,モンシロチョウ>アオスジアゲハ>ァゲバ>コチャバネセセリ>コミスジ>ルリシジミが優占する全25種からなる春夏群集が成立していた。3.8月下旬〜11月下旬には,ヤマトシジミ>オオチャバネセセリ>キチョウ>ツバメシジミ>イチモンジセセリ>サトキマダラヒカゲ>キタテハが優占する全18種からなる秋群集が成立していた。4.総目撃種数総目撃個体数多様性値から判断して,調査地のチョウ群集は,1985年の落ち込みから回復し,調査初期の状態に戻ったと判断された。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.15-30, 2002-07
被引用文献数
1

1990年に行われた1旬につき2回,計54回の2.5km-帯状センサスにより,茨城県竜ヶ崎市近郊(竜ヶ岡)では,7科43種2,726個体のチョウが目撃され,群集構造,種数,個体数,多様性,優占種の季節変化について解析が行われた。以下はその結果である。1.総目撃個体数5以上のチョウ33種の26の調査季節への個体数分布マトリックスに,群分析と主成分分析を併用して,四つの群集と,四つの活動季節を分類した。2.3月上・中旬,6月下旬,7月中旬および8月下旬〜11月には,ヤマトシジミ>キチョウ>イチモンジセセリ=オオチャバネセセリ>キタテハが優占する全15種からなる秋群集が成立していた。3.3月上旬〜5月上旬,5月下旬〜7月中旬,8月下旬〜11月には,モンシロチョウ>ツバメシジミ>ヒメウラナミジャノメが優占する全12種からなる春秋群集が成立していた。4.3月上・中旬,6月下旬,7月中旬〜11月には,アオスジアゲハ>アゲハが優占する全15種からなる夏群集が成立していた。5.5月中旬には,コチャバネセセリが優占する初夏群集が成立していた。6.総目撃種数,総目撃個体数,多様性値から判断して,調査地のチョウ群集は1985年の落ち込みから回復し,調査初期の状態に戻ったと判断された。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.31-42, 1989-12

1982年に行われた一旬につき2回,計49回の2.5km-帯状センサスにより,茨城県竜ヶ崎市近郊(竜ヶ岡)では,6科43種2,409個体のチョウが目撃され,群集構造,種数,個体数,多様性,優占種の季節変化について解析が行われた。以下はその結果である。1.チョウ43種の25の調査季節への個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,五つの活動季節と,対応する五つの群集を分類した。2.4刀は,ルリシジミが優占する全3種からなる春群集が成立していた。3.5〜6月は,モンシロチョウ,ヒメウラナミジャノメ,ヒカゲチョウ,キタテハが優占する全13種からなる初夏群集が成立していた。4.8月は,ヤマトシジミ,コチャバネセセリ,コミスジ,キチョウが優占する全19種からなる晩夏群集によって特徴づけられる。5.9月は,オオチャバネセセリ,イチモンジセセリ,ツバメシジミが優占する全6種からなる初秋群集によって特徴づけられる。6.11月は,全2種からなる小さな群集である晩秋群集が成立していた。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.15-30, 1994-01

1985年に行われた1旬につき2回,計49回の2.5Km-帯状センサスにより,茨城県竜ヶ崎市近郊(竜ヶ岡)では,7科41種2,329個体のチョウが目撃され,群集構造,種数,個体数,多様性,優占種の季節変化について解析が行われた。以下はその結果である。1.総目撃個体数5以上のチョウ29種の25の調査季節への個体数分布マトリックスに,群分析と主成分分析を併用して,四つの活動季節と,五つの群集を分類した。2.8〜11月中旬には,ヤマトシジミ>キチョウ>キタテハが優占する全13種からなる秋群集が成立していた。3.9月は,オオチャバネセセリ>イチモンジセセリが優占する全5種からなる初秋群集が成立していた。4.6,7月と9月は,モンシロチョウが優占する全6種からなる夏秋群集によって特徴づけられた。5.5〜7月はヒメウラナミジャノメが優占する全14種からなる初夏群集が成立していた。6.3月下旬〜4月はルリシジミが優占する全3種からなる春群集が成立していた。7.目撃総数が大幅に減少し,特に,初夏群集の後退が顕著であった。
著者
山本 道也 ヤマモト ミチヤ
雑誌
流通經濟大學論集
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.31-42, 1989-12

1982年に行われた一旬につき2回,計49回の2.5km-帯状センサスにより,茨城県竜ヶ崎市近郊(竜ヶ岡)では,6科43種2,409個体のチョウが目撃され,群集構造,種数,個体数,多様性,優占種の季節変化について解析が行われた。以下はその結果である。1.チョウ43種の25の調査季節への個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,五つの活動季節と,対応する五つの群集を分類した。2.4刀は,ルリシジミが優占する全3種からなる春群集が成立していた。3.5~6月は,モンシロチョウ,ヒメウラナミジャノメ,ヒカゲチョウ,キタテハが優占する全13種からなる初夏群集が成立していた。4.8月は,ヤマトシジミ,コチャバネセセリ,コミスジ,キチョウが優占する全19種からなる晩夏群集によって特徴づけられる。5.9月は,オオチャバネセセリ,イチモンジセセリ,ツバメシジミが優占する全6種からなる初秋群集によって特徴づけられる。6.11月は,全2種からなる小さな群集である晩秋群集が成立していた。A butterfly community in Ryugasaki, Ibaraki Pref., is composed of five subcommunities in five different seasons. Spring subcommunity, involving Celastrina algiolus ladonides and other two species, is formed in April. Early-summer subcommunity, involving Pieris rapae crucivora, Ypthima argus, Lethe sicelis, Polygonia c-aureum, and other nine species, is formed in May and June. Late-summer subcommunity, involving Pseudozizeeria maha, Thoressa varia, Neptis sappho, Eurema hecabe mandarina, and other 15 species, is formed in August. Early-autumn subcommunity, involving Polytremis pellucida, Parnara guttata, Everes argiades hellotia, and other three species, is formed in September. Lateautumn subcommunity, involving two species, is formed in November.
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.16-32, 1983-02

1975年5月上旬から11月上旬まで,モンシロチョウの寄主選好性を調べるため,北海道大学構内に生育している10種類の植物-セイヨウアブラナ・キャベツ・キレハイヌガラシ・カキネガラシ・ハルザキヤマガラシ・ダイコン・ハクサイ・コンロンソウ・ノウゼンハレン・ナズナ-を同構内に設けた実験区に移植・栽培し,そこに発生したモンシロチョウの個体数を発育段階ごとに調査した。10種類の実験植物のうち,ノウゼンハレン・ナズナについては産卵が認められなかったが,残り8種について,生命表が作製され,考察がなされた。以下は,その一部として,第一世代,5月7日〜7月5日までの結果である。1.セイヨウアブラナ・キャベツ(越年株)・カキネガラシ・ハルザキヤマガラシ・コンロンソウの5種は,いずれも,春に成長のピークをもつ植物であるが,それらに寄生したモンシロチョウは,生存率は高いが,発育期間が長かった。2.キレハイヌガラシ・ダイコン・ハクサイの3種は,いずれも,モンシロチョウの産卵期には成長の初期にあり,それらに発生したモンシロチョウは,生存率は低いが,発育期間は短かった。3.上記のうち,生存率の差は,5齢幼虫の捕食による死亡率の差に,発育期間の差は,2齢期までの経過日数の違いに,原因があることがわかった。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.42-57, 1986-09

モンシロチョウ雌の産卵選好性を調べるため,10m×10mの実験区に10個体ずつ10種(アブラナ科9種セイヨウアブラナ,キャベツ,キレハイヌガラシ,カキネガラシ,ハルザキャマガラシ,ダイコン,ハクサイ,コンロンソウ,スカシタゴボウ,ノウゼンハレン科1種-ノウゼンハレン)の実験植物を調査地のphenologyに合せて,播種,定植または移植し,そこに飛来した雌がそれぞれの実験植物に対して示す行動(産卵,非産卵:移動飛翔,産卵飛翔,吸蜜,休息)を直接観察した。産卵が観察された頻度と観察されなかった頻度の発生世代,実験植物(高さ,表面積,種別)による違いを考察した。以下はその結果である。1.高さ5cm未満の寄主は避けられる傾向が強い。2.表面積1,000cm^2未満の寄主も避けられる傾向が強い。3.表面積8,000cm^2以上の寄主が好まれ,しかも,これ以上では寄主の選り好みはない。4.8,000cm^2以上の表面積を自然状態で最も長く維持している寄主はキレハイヌガラシであるため,結果的に,キレハイヌガラシでの産卵が多くみられることになる。5.この雌によるキレハイヌガラシに対する選好は,遺伝的に決められた固定したものではなく,寄主の生態的特徴の結果であり,時間的,地理的に変化する可能性が大きい。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通経済大学論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.p49-60, 1986-03

モンシロチョウ第四世代の寄主選好性と不完全発生の実態を調べるため,北海道大学構内に生育している10種類の植物-ツケナの2品種(バカラシナ,シガツシロナ),キャベツ,キレハイヌガラシ,ハルザキヤマガラシ,ダイコン,カブ(サッポロムラサキ),コンロンソウ,ノウゼンハレン,スカシタゴボウ-を同構内に設けた実験区に移植あるいは播種し,そこに発生したモンシロチョウの個体数を発育段階ごとに1975年の9月10日から11月7日まで調査した。それぞれの実験植物について,個体数の変化,寄生密度,生命表,発育期間,生存曲線が明らかになった。1.寄主1m^2あたりの卵密度は0〜33.3,5齢幼虫密度は0〜1.5であり,スカシタゴボウ,キレハイヌガラシおよび秋蒔きの栽培性アブラナ科植物が第四世代の寄生対象として重要である。2.蛹化個体はいずれの寄主でも得られなかった。9月〜11月の温度条件から考えて,第四世代で越冬蛹となり得る個体は,9月10日〜9月15日の間に産卵されたものだけであると判断された。3.寄生小区数,寄生密度,生存率,発育期間を基準にして,キレハイヌガラシを第四世代の好適寄主と判断した。4.札幌周辺域にみられる第四世代の不完全発生は,年4回発生を常態とする隣接個体群からの遺伝子の流入による可能性が高い。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.15-26, 1990-12

モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)幼生期の食草選好性を,9種のアブラナ科植物と1種のノウゼンハレン科植物を対象に,三つの個体群指標-密度,生存率,発育速度-を使って判定した。世代ごとに食草選好性は変化するものの,一年を通してみると,キャベツ(Brassica oleracea)を筆頭に,キレハヌイガラシ(Rorippasy lvestris)>ハルザキヤマガラシ(Barbarea vulgaris)>ダイコン(Raphanus sativus)>ハクサイ(Brassica campestris)が好適寄主として挙げられた。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.38-57, 1984-01

1975年5月上旬から11月上旬まで,モンシロチョウの寄主選好性を調べるため,北海道大学構内に生育している10種類の植物-セイヨウアブラナ・キャベツ・キレハイヌガラシ・カキネガラシ・ハルザキヤマガラシ・ダイコン・ハクサイ・コンロンソウ・ノウゼンハレン・ナズナーを同構内に設けた実験区に移植あるいは播種し,そこに発生したモンシロチョウの個体数を発育段階ごとに調査した。それぞれの実験植物について,個体数の変化,寄生密度,生命表,発育期間,生存曲線,基本要因が得られた。本報告は,その一部として,第二世代,6月23日から8月31日までの結果である。1.生存率は,第一世代より低く,キャベツ・キレハイヌガラシ・ハクサイ・ダイコンで0.8〜0.3%,セイヨウアブラナ・カキネガラシ・ハルザキヤマガラシ・コンロンソウ・ノウゼンハレンで0%であった。2.発育期間は,27.6〜31.4日の間にあり,寄主間での差は小さいと判断された。3.内的自然増加率を基準に,モンシロチョウ第二世代の好適寄主として,キャベツ・キレハイヌガラシの2種を選んだ。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.52-62, 1988-10

1982〜1987年に,竜ヶ崎市流通経済大学構内において,1日13回の帯状センサス法を用いて,チョウの日周活動性の調査が行われた。4〜10月にかけて計26回の調査で,7科44種10,782個体が目撃され,群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての日周変化について解析が行われた。以下はその結果である。1.チョウ44種の13の調査時間帯への個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,二つの活動時間帯と二つのチョウ群集を分類した。2.早朝および午後遅くから夕刻にかけての時間帯は,サトキマダラヒカゲ,ヒメジャノメに代表される好陰地性群集の活動の場である。3.日中の時間帯は,ヤマトシジミ,ヒメウラナミジャノメ,オオチャバネセセリ,アゲハ,イチモンジセセリ,モンシロチョウ,アオスジアゲハ,ツバメシジミ,コミスジに代表される好陽地性群集の活動の場である。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1-20, 1995-03

1986年の竜ヶ崎市郊外の2.5km-帯状センサスにより,チョウ成虫の生息環境の調査が行われた。3〜11月にかけて1旬につき2回の調査で7科44種3,091個体が目撃され,距離補正の上(補正総個体数=2,048),群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての生息環境による違いが報告された。以下はその結果である。1.チョウ44種の13の調査小区への補正個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,三つの生息環境(オープンランド,モザイク,森林)と二つの群集(オープンランド群集,森林群集)を区別した。2.耕作地とその周辺域には,モンシロチョウ>ヤマトシジミ>キタテハ>イチモンジセセリが優占する計18種からなるオープンランド群集が成立していた。3.森林には,オオチャバネセセリ>ヒカゲチョウ>キチョウ>ゴイシシジミ>アゲハ>>ヒメウラナミジャノメ>サトキマダラヒカゲ>コチャバネセセリ>ルリシジミ>アオスジアゲハ>コミスジを優占種とする計26種を含む森林群集が成立していた。4.これら二つの群集の移行帯的性格をもつたモザイクが第三の環境として区別され,オープンランド群集と森林群集の混合体となつていた。5.種数については,オープンランド群集はモザイク>オープンランド>森林,森林群集は森林>モザイク>オープンランドの順となり,個体数については,オープンランド群集はモザイク>オープンランド>森林,森林群集は森林>モザイク>オープンランドの順となり,多様性については,両群集ともにモザイク>森林>オープンランドの順となった。6.1986年には,調査地にある森林の一部が造成地に変わったため,そこではチョウは生息不能となったが,全体としては目撃種数,目撃個体数ともに増加し,特に,造成地に隣接する森林では特定の種の集中化が見られた。全体として,1985年の環境変化から回復傾向にあるが,以前の状態とは大きな違いがある。
著者
山本 道也
出版者
流通経済大学
雑誌
流通經濟大學論集 (ISSN:03850854)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-16, 2005-07

1991年の竜ヶ崎市郊外の2.5km-帯状センサスにより,チョウ成虫の生息環境の調査が行われた。3〜11月にかけて1旬につき2回の調査で7科39種1,713個体が目撃され,距離補正の上(補正総個体数=1,552),群集構造,種数,個体数,多様性,優占種についての生息環境による違いが報告された。以下はその結果である。1.目撃総個体数5以上のチョウ31種の19の調査小区への補正個体数分布マトリックスより,群分析と主成分分析を併用して,三つの生息環境(人家周辺域,荒地森林)と二つの群集(森林群集オープンランド・モザイク群集)を区別した。2.森林やそれと隣接する荒地では,ヤマトシジミ>アゲハ>オオチャバネセセリ>ルリシジミ>アオスジアゲハ=イチモンジセセリを優占種とする計23種が森林群集を構成していた。3.荒地や人家周辺域には,キチョウ>モンシロチョウ>キタテハ>ツバメシジミを優占種とする16種からなるオープンランド・モザイク群集が成立していた。4.種数個体数ともに過去10年間の最低となったが,オープンランド・モザイク群集の台頭と優占種への目撃個体数の集中度合いが減少し,均等性が増大した結果多様性はむしろ上昇した。