著者
二宮 健史郎
雑誌
滋賀大学経済学部CRR Discussion Paper J
巻号頁・発行日
vol.J-70, pp.1-27, 2019-01

ケインズ経済学を単純化したIS・LM モデルは、スタグフレーションによる景気後退に有効な処方箋を提示できなかったケインズ経済学の退潮に軌を同じくして新古典派経済学、新しい古典派から厳しい批判に晒されることになる。しかしながら、サブプライム問題に端とぉ発した世界的金融危機の発生により、ポスト・ケインズ派に属するH.P. ミンスキーの金融不安定性仮説は注目を浴びる。IS・LM モデルは、ポスト・ケインズ派マクロ動学モデルの基礎となっていることに疑いの余地はない。本稿では、ケインズ派の基本モデルであるIS・LM モデル、2 次元の簡単なポスト・ケインズ派のマクロ動学モデル、その分析手法や数値シミュレーションの方法等を概観する。そして、IS・LM モデルが資本主義経済における内在的な循環や、安定性を論じるポスト・ケインズ派マクロ動学モデルによる分析の基礎として位置づけられ、教育ツールとして必要不可欠なものであることを示す。そして、Hopf の分岐定理による閉軌道の存在証明や数値シミュレーション等、非線形経済動学の分析手法の展開を簡潔に示し、ポスト・ケインズ派マクロ動学分析の手法としての有用性を論じる。