著者
小田 敏雄
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu Univerisy (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.14, pp.63-78, 2020-03

本研究は,精神障害者の意思表出と自己決定支援のための「場と空間の活用」の可能性を実証研究で探ることを目的にした研究のための文献からの検討である。そのため「場」,「空間」が,対人支援など人にかかわる分野でどのように活かされ,意義があるか文献から検討した。文献検索にはCiNiiを活用し該当した31 件の論文と著者検索から9 本の論文を選定した。社会福祉,高齢者福祉,社会教育,精神医療,建築,学校教育の分野から検討し,人がかかわりあう「場」の持つ力と構成する成員の意欲を創出することが確認できた。そして,精神障害の特性を踏まえ検討していった。そのなかで「基地として,隠れていられる場」「抱える環境」が明示され,続いて,当事者であり支援者でもあるパトリシアディーガンが述べている,リカバリーを育むリハビリテーションの要点である①柔軟性②多様性③当事者の存在と希望は伝染する④共に弱さに向き合い成長しようとする支援者の姿勢が,関連しあっていた。今後,前述の二点と合わせ,六つの視点をもち精神障害者の意思表明,自己決定支援のための「場と空間の活用」を実証していくのが課題である。