著者
塚本 まゆみ
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13477781)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.103-114, 2003-03-20

ハリウツド映画に登場した新しいタイプの行動的なヒロイン像の分析を通じて,性別役割分担論や女性の社会的地位に関する現実と理念の変容を読む。そこに現われた女性の自己決定への強い意志は,他方では身体を通じて表象されてきた「女性らしさ/男性らしさ」というジェンダー規範そのものの変容として表現されようとしており,そのような規範に対する根本的な疑問の出発点ともなり得るだろう。
著者
望月 隆之
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.12, pp.195-204, 2018-03

2016 年7 月26 日未明,「津久井やまゆり園」にて元施設職員による殺傷事件が起きた。被害者は施設の利用者と職員であり,19 名の利用者が亡くなり,26 名が重軽傷を負うという大事件となった。事件後,報道機関により大きく報道され,専門家によるコメントや検証がなされた。しかし,事件の当事者である知的障害者の声は,ほとんど報道されてないという状況が続いた。「にじいろでGO!」は,横浜市在住の知的障害者の女性が,神奈川県内在住の知的障害者及び家族,支援者に呼びかけ,知的障害者のこれまでの人生や相模原障害者施設殺傷事件について,当事者が語る声を社会に伝えるために作られた当事者団体である。これまでの活動は,知的障害者の声として多くのメディアを通じて社会に発信されている。本報告では,「にじいろでGO!」の立ち上げの経緯及び事件後1 年までの活動について報告し,知的障害者が自ら事件について語ることの意義及び今後の課題と活動の展望まで述べる。
著者
藤澤 益夫
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-48, 1998-12-25

社会保障ないし福祉社会のように理念としても制度としても成立後まだ歴史が浅く,しかもいまなお展開のしきりな分野については,その実体と機能は日々揺れ動いているに等しい。そこで,社会保障評価の土台を固めるフレームワークのひとつとして,これまで意外におろそかにされてきた社会保障/福祉社会をめぐる基本的な諸用語の生まれ育った経緯を探るエティモロジカルな発生論的考察をあらためて試みた。こうして,現代の福祉概念をささえているキーワードが,社会経済的環境条件の変遷とたがいにからみあいながら,変容を重ね定着してゆく道筋を具体的・沿革的に回顧し追跡することにより,社会保障/福祉社会の現座標にたいする認識の錯綜を整理して,その役割への理解を深め,ひいては将来像の堅実な展望に資そうとするものである。
著者
隅河内 司
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.13, pp.81-99, 2019-03

2014 年(平成26 年)6 月に介護保険法が改正(2015 年4 月施行)された。この法改正では,2025 年を目途に,地域で誰もが安心して最期まで暮らせる社会の実現に向け,医療,介護,住まい,生活支援・介護予防を包括的に確保する「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。このため,新たな事業として介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」という。)及び生活支援体制整備事業が創設された。そして,これら事業において,助け合い活動や地域活動を進める上で中核的な役割を果たす生活支援コーディネーターを全国の市区町村全域と日常生活圏域に設置することになったのである。本研究では,相模原市の生活支援コーディネーターを対象に,その活動の現状を調査し,今後の可能性を探った。結果として,相模原市の生活支援コーディネーターの配置については,市人口・区域面積の規模や地区の特性,各高齢者支援センターの運営など地域実情の違いから地域差は見られるものの,市全体でみると,資源の開発を目的とした生活支援体制整備事業は着実に取り組まれており,地域づくりや生活支援等サービスの整備を図るための土台づくりは進んでいることが明らかになった。今後,市コーディネーターが活躍できるように,全ての高齢者の介護予防を含めた地域づくりや地域福祉を推進する視点を市の方針として明確に組織内で共有するとともに,地域づくり部会の運営や住民主体サービス補助制度の見直しを図るほか,小地域活動の活性化を図ることが求められている。
著者
冨永 健太郎
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.195-204, 2007

1949年の身体障害者福祉法では,その制定過程において,いわゆる「総合法」的な議論がなされたが,結果としてそれは実現しなかった。また,1960年の精神薄弱者福祉法は,児童福祉法の唱える「独立自活」規定との連続性を(形式的にであったとしても)担保するという考えのもとで,機能障害によって保護・収容するのではなく,あらゆる「広義の障害者」を対象としてきた救護施設を周到に排除することで成立した。わが国では,この身体障害者福祉法と,精神薄弱者福祉法の制定によって,障害種別施策が確立する。この2法が成立したことで,他国に例を見ない機能障害別の縦割り制度が誕生したのである。こうした「機能障害の種類と年齢による対象区分」が先立つわが国の障害者福祉のあり方に対して,日本障害者協議会(JD)は,1996年に総合福祉法としての障害者福祉法を試案として提起している。だが,現行の障害者自立支援法では,そのような試案を必ずしも反映するものにはなりえていない。平成21年度には障害者自立支援法の改正が行なわれる。当該の法改正においては,制度が支援を阻む事態を回避しなければならない。それは,何よりもまず,障害のある当事者の支援ニーズが先行するものでなければならない。
著者
坂井 忠通
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.177-188, 2000-12-30

本論文は情報システム開発におけるソフトウェアの品質管理手法の改善を実践的な立場から考察,提案するものである。情報システム開発における上流工程(設計,作成工程)で作り込まれたバグ(プログラムのミス等)を下流のテスト工程で確実に摘出/修正して品質向上を実現するために,広く採用されているPB曲線活用方法の限界とその対策をテスト作業者のマインドに着目して改善する提案とその適用事例について述べる。
著者
和 秀俊
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.13, pp.115-131, 2019-03

本研究は,現代社会の深刻な問題となっている大学生のメンタルヘルスにおいて,大学生の自己肯定感や自尊感情を高め,SOC(Sense of Coherence=首尾一貫感覚)やレジリエンスを向上させるための「きっかけ」や「仕組み」を,先行研究や既存調査などの考察から探索的に検討する。その結果,ボランティア活動は,学校や家庭以外において,大学生が共同して社会的課題に取り組むという社会貢献を通して,社会的な役割を獲得することにより自己有用感や自己肯定感,自尊感情が向上し,人とのつながりを構築できる社会活動であることがわかった。したがって,ボランティア活動は,大学生のSOCやレジリエンスを高め,問題解決能力やストレス対処能力を向上させ,若者のメンタルヘルスに寄与する可能性があると思われる。
著者
伊東 秀幸 大西 守 田中 英樹 桑原 寛 伊藤 真人 大塚 俊弘 野口 正行 金田一 正史 斎藤 秀一 山本 賢 呉 恩恵
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-31, 2016-03

精神障害者支援に関して,市町村は精神障害者に対して身近な地域できめ細かく支援していく役割があり,保健所はその市町村に対して専門性や広域性が必要な事項について支援していく役割がある。また,精神保健福祉センターは,保健所,市町村に対する技術援助の役割を担っている。以上のように各機関は,それぞれ異なる役割を期待されているが,精神保健福祉法の改正や障害者自立支援法の施行などもあり,精神保健福祉行政を取り巻く環境は大きく変化している。そのため,保健所,市町村そして精神保健福祉センターによる精神障害者に対する支援の現状を把握し,それぞれの機関の果たすべき役割について見直していくことが重要である。そこで本研究では,厚生労働省平成26 年度障害者総合福祉推進事業「保健所及び市町村における精神障害者支援に関する全国調査」の結果から,保健所及び人口30 万人未満の市町村のデータを抽出し,精神障害者支援に関する,保健所と市町村の役割とその現状について考察を試みた。調査の結果から,指定都市型保健所,中核市型保健所や10 万人未満,30 万人未満の市町村においては,精神障害者支援に関する様々な取り組みがされているのに対し,都道府県型保健所ではこれまでの事業を中心に実施されている現状が分かった。これは,都道府県型保健所と市町村との間で精神障害者支援に関する役割分担が進んでいることからくることと推測される。30 万人未満の市町村では,精神障害者支援に関して,これまでの都道府県中心から市町村主体と変わっているが,その実施にあたり様々な困難を抱えており,これからも都道府県(保健所)等のバックアップが必要と考えている。そのための具体的な対策としては,保健所や精神保健福祉センターによるバックアップ体制を強化するとしている。一方,保健所は,今後重要となる精神保健福祉業務の体制については,管内市町村との連携強化を考えているという現状が把握できた。精神保健福祉センターに対する調査では,精神保健福祉センターの業務のうち保健所への技術援助は積極的に取り組む必要があるとしている。以上のことから,今後,保健所から管轄市町村に対して,これまで以上に技術援助や連携を進めていくことが必要であり,精神保健福祉センターからの技術支援は,保健所はもとより直接的に市町村にも積極的に進めることが課題であると思われる。また,「保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領」は,平成18 年に発出以来10 年が経過していることから,現状にあった改訂の必要性があると思われる。
著者
藤澤 益夫
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13477781)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-49, 2003-03-20

絶対に一過性の時間の流れのなかで,その速度を相対的に緩める努力の典型が情報の領域をめぐってみられる。それは,伝達速度改善の永い道程をへて,いまでは情報の生産と処理の全面におよぶが,情報伝達の即時性を高めるさまざまな工夫の文化史を近世日本を中心にして具体的にふりかえり,現代の情報社会のもつ社会的意味を考える。それを通じて,時間という資源の利用効率の飛躍的向上が拓く広大な可能性を評価し,反面で,管理社会での情報の集中的な支配と操作がもたらす危うさを問いかける。
著者
春名 徹
出版者
田園調布学園大学
雑誌
調布日本文化 (ISSN:09171169)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.六七-八三, 2000-03-25
著者
栗木 黛子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.17-32, 2007-03-17

・公的な福祉サービスとしての食事サービスは,2006年度の介護保険の見直しにともない,制度としての終焉を迎えたという事態になった。・1960年代,都会の片隅から増え始めた一人暮らしの高齢者にとって,必要な社会的支援の一つが食事サービス(食事づくり機能の社会的支援)であった。・食事サービスはかなり長期にわたってボランティアが主流の時代が続き,その回数も月に数回程度であったが,社協や行政による側面からの支援もあって全国的に展開されるようになっていった。・1992年になって,国は週5回以上の配食サービス(生活支援型食事サービス)にたいする補助制度を開始する。この事業の活用は市町村の数パーセント程度とはいえ,週2〜3回程度の配食サービスも含め,食事サービスは全国のかなりの地域で展開されてきたと思われる。・2000年開始の介護保険では食事サービスは,在宅サービスには入らなかったが周辺事業として補助事業は継続されてきた。しかしながら,2006年の見直しにより,介護保険給付を「介護」(いわゆる身体介護)に特化するとの方針の下に,生活援助(いわゆる家事関連サービスを含む)の給付はきわめて制約され,あるいは受益者負担となった。・調理機能という家事サービスの一つである食事サービスにも,利用対象者の制限や食費の概念を上回る高額な利用料が課せられることとなった。この時点で,福祉サービスとしての食事サービスは一つの終焉を迎えたといわざるをえない。・将来の高齢社会にむけて,住み慣れた地域で在宅で暮らす高齢者がいつまでも「自立」して暮らすために,食事づくり支援を社会的な仕組みとして提供保障していくために,食事サービスの再生の手がかりをさぐる。
著者
柴崎 智恵子
出版者
田園調布学園大学
雑誌
人間福祉研究 (ISSN:13477773)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.125-143, 2006-03-17

先進諸外国においては,疾病・障害を抱える親,きょうだいあるいは祖父母などサポートを必要とする家族のケアを担う児童が一定数存在することが明らかになっており,そのような家族ケアを担う児童のニーズ把握や支援のあり方が新たな児童福祉問題として注目され始めている。本稿においては,早くからこのような児童の問題に着手し,調査・研究・支援を体系的に行っているイギリスの児童介護者調査報告書を取り上げ,家族ケアを担う児童の生活状況についてレビューを行った。イギリスにおいて「ヤングケアラー(Young carer)」と称されるこのような児童たちは,家事援助や身辺的介助のみならず,要援護者の精神的サポートや与薬の管理,年金や保険の受け渡しまで担う。また,少数民族に属する家庭では,要援護者の通訳の役割を果たすこともある。ヤングケアラーはそのケア責任のため,友人関係や学業を犠牲にし,学習面での困難を抱えることも少なくない。また特に,ひとり親家庭,少数民族,要援護者である家族が精神疾患の場合,ケアを担うことによる影響が多岐に渡ることなどが報告されている。本稿における考察を踏まえ,今後はイギリスのみならず,このような児童による家族ケアを課題としているアメリカ,オーストラリア等の研究動向を参考にしつつ,我が国の現状についても言及していきたいと考えている。