著者
得丸 公明
雑誌
研究報告 自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2011-NL-200, no.1, pp.1-8, 2011-01-21

「ヒト話し言葉がデジタルであるという事実は,ヒトの言語と意識の起源を理解する上できわめて重要であるのに,まだあまり理解されていない.(1)」 そもそもデジタルという概念がきちんと定義・検討されていない.通信回線上の雑音が信号の量子エントロピーを増大させるときに,デジタル信号の離散性が信号対雑音比 (S/N 比) を高めることによって,信号誤りの確率を大幅に下げることもあまり認識されていない.本稿において筆者はデジタルを 「(有限個の離散信号によって表現される) 情報」 として定義づけ,それがアナログ信号に比べて桁違いに多くの符号語を生みだすことや,信号の確達性を高めたことによって,開始信号と終止信号の間で一次元状に配列される信号の位置や結びつきが意味をもつようになった (文法が生まれた) ことを指摘する.我々はこの言語情報を脳内に貯蔵する.それがいったい何でどのようなメカニズムであるのか,まだまったく解明されていない.言語記憶について心理学・脳神経生理学に照らして考えてみる.