著者
北島 純
雑誌
社会構想研究 = Journal of Social Design (ISSN:2433670X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.35-44, 2022-09-30

本論文は,広告をはじめとする表現活動が「文化の盗用」の非難を浴びせられるリスクを回避するために必要な考慮要素を,ジェームズ・O・ヤングの文化的盗用論,文化的植民地主義論及び無形文化遺産保護条約制度を参考にして検討したものである。伊ヴァレンティノのCMが非難を浴びた事案等の検討を通じて,無形文化遺産保護条約の規定する無形文化遺産一覧表の該当性,広告内容の強度性,不当な危害・不快感の有無,強者の視点への偏り(少数者への配慮),広告市場の客観的状況と歴史的コンテクスト,広告当事者の「声」の想起(対話性)という要素が,伝統文化に関わる広告等の表現活動の適切性を事前判断する基準になりうることを論じた。
著者
橋本 純次 坂田 邦子 三浦 伸也 鈴木 優香理 久保田 彩乃
雑誌
社会構想研究 = Journal of Social Design (ISSN:2433670X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.57-66, 2023-03-31

新型コロナウイルス(COVID―19)に関するテレビ報道は,「災害の影響が特定の地域に限定されない」,「災害現場が特定できない」,「専門家の知見への依存度が高い」,「対応策の『正解』が日々更新される」といった点で従来の自然災害報道とは一線を画すものであった。本稿では,2020 年1月以降に国内のテレビ放送事業者が直面した困難とその解決策について「リスク・コミュニケーション」の概念を端緒として考察する。本稿では,全国のテレビ局を対象としたアンケート調査と6 社9名を対象としたインデプスインタビュー調査を実施し,「不確実性」の高い災害においてテレビ局によるリスク・コミュニケーションの促進がいかなる条件のもと可能か検討した。調査により得られた知見から,「視聴者ニーズ把握の困難」と「科学的根拠の検証能力の不足による専門家依存」というテレビ局の直面する課題を解決するため,「災害報道に関するメタ知識の提供」,「災害/科学技術担当記者の役割の見直し」,「記者のリカレント教育の強化」の3 点を提言した。