著者
所 千晴
出版者
ホソカワミクロン株式会社
雑誌
粉砕 (ISSN:04299051)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.13-20, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
14

SDGsそしてカーボンニュートラル時代を迎え,サーキュラー・エコノミーをはじめとする資源循環型社会構築に対する社会の関心はますます高まっている。資源循環のための粉体プロセス技術には,物理的,物理化学的,化学的な種々の分離技術が存在するが,いずれも省エネルギーかつ省資源という大きな制約を満たすことが大前提であり,カーボンニュートラルなどの環境負荷低減と資源循環との両立のために,サーキュラー・エコノミーのような多重資源循環ループを支える多様な分離技術開発が必要とされている。本稿ではそのような取り組み例として,カーボンニュートラル促進による需要の指数関数的な増加が見込まれるリチウムイオン電池に対し,サーキュラー・エコノミーの概念図にある一番外側のリサイクル技術開発と,その内側の正極活物質粒子ダイレクトリサイクル技術開発の例を紹介した。
著者
高橋 向星
出版者
ホソカワミクロン株式会社
雑誌
粉砕 (ISSN:04299051)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.22-29, 2018-12-15 (Released:2018-12-15)
参考文献数
8

サイアロン蛍光体はSi-Al-O-Nなどの身近な元素を主成分とする粉末発光材料である。21世紀になって発見された新材料であるが,すでに家庭にも普及した白色LED照明やRGBの3原色を鮮やかに表示できる液晶ディスプレイ用として広く使われている。本稿では,まず,これまでに実用化され蛍光体メーカにより量産されている蛍光体を紹介し,特に学術的にも興味深い性質を持つβサイアロン緑色蛍光体について詳述する。次に今後期待される超高演色照明やSuper Hi-Vision (8K) TV用にも応用可能な各種サイアロン蛍光体の例を挙げ,その中から青色JEM蛍光体を例にしてスペクトル制御の原理についても説明する。最後に蛍光体の特性評価や工業的取扱いにおいて重要となる標準物質としてのサイアロン蛍光体の役割についても言及する。
著者
後居 洋介
出版者
ホソカワミクロン株式会社
雑誌
粉砕 (ISSN:04299051)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.39-43, 2018

<p>近年,セルロースの新たな利用方法として,セルロースナノファイバー(CNF)が注目を集めている。CNFはパルプなどのセルロース原料をナノサイズまで細かく解きほぐしたもので,高強度,高弾性率,低線熱膨張係数,高透明性,大比表面積など,多くの特徴を有している。第一工業製薬ではこのCNFを水系の添加剤として研究開発を進めている。CNFは水中でネットワーク構造を形成する。このネットワーク構造に起因して,非常に高い擬塑性流動性などのユニークなレオロジー特性を発現する。さらに,油滴や微粒子などの安定化といった効果も得られる。また,CNFは乾燥させることで高透明性かつ高強度なフィルムを調製することも可能である。当社のCNFは上述のようなレオロジー特性を生かして,水性ゲルインクボールペンインク用増粘剤として採用されている。このボールペンは筆記具として世界初のCNF実用化案件として,各所から注目を集めている。</p>