雑誌
長崎県水産試験場研究報告 (ISSN:03888401)
巻号頁・発行日
no.33, pp.1-6, 2008-03

大村市沿岸で2005年12月上旬にフサイワズタの大量発生が観察され、ナマコ桁曳網漁業の操業に被害をもたらした。大量発生は長崎空港に面した海岸線約4kmの水深2〜10mの泥質の海底上に浮遊して堆積し、厚さは1.2mに達した。堆積したフサイワズタは1月以降には減少し、9月には最低となったが、10月以後再び増加し、消失することはなかった。この間、3月には幼体が形成され、8月には成熟する等、藻体は浮遊状態で生育を続けた。2005年12月に認められたフサイワズタの大量発生は浮遊状態で生活を維持している個体群がもとになって発生したと考えられた。大量発生を誘発した原因として2005年の夏〜秋に水温が高かった点が疑いとして残された。
著者
狩野 奈々 北原 茂 平野 慶二
雑誌
長崎県水産試験場研究報告 (ISSN:03888401)
巻号頁・発行日
no.37, pp.7-10, 2011-12

2009年7月に有明海,橘湾や八代海において,Chattonella赤潮が広範囲かつ高密度に発生し,養殖魚類で甚大な被害が発生した。長崎県海域ではハマチ,ヒラマサ等約25万尾,約4億3千万円と本県で歴代2位となる漁業被害が発生した。熊本県では約8億7千万円,鹿児島県では約20億3千万円の漁業被害が発生し,3県の被害総額は約33億円であった。赤潮等を対象とした漁場環境のモニタリング調査は定点観測が主体で行われており,モニタリング調査の充実は赤潮対策を検討する上で重要な役割を果たしている。赤潮の挙動を正確に把握するためには,調査定点数や調査頻度を増やす必要があるが,時間的制約や人的制約を受け困難な状況にある。そこで,詳細な観測データが得られる多項目水質計とGPSロガーを併用し,連続的にデータを取得できる走行型の水質連続観測について,通常の定点観測と並行して2010年7月20日に橘湾で行った調査事例を挙げ,それぞれの水質結果から水平分布図を作成し検証したので紹介する。
雑誌
長崎県水産試験場研究報告 (ISSN:03888401)
巻号頁・発行日
no.25, pp.9-13, 1999-03

大村湾では体色の黒いマナマコが増加し問題となっている。しかしながらこのナマコは通常の味覚をもつため,料理素材としては「アカ」「アオ」ナマコと同様に利用可能である。そこで,加工をする際に必要な基礎知見として加熱処理による物性等を調査した。また,その際生じたエグ味成分解明の試みとして遊離アミノ酸について検討した。加熱処理は50~140℃間の温度帯を10℃間隔で10,30,90分間とした。10分加熱処理は60,130,140℃,30分加熱処理は60,120~140℃,90分加熱処理は50,100~140℃で軟化した。50~60℃での軟化は,結合組織の構造の変化,100℃以上では崩壊によるものと思われた。また,エグ味を呈するとされる遊離アミノ酸は全て閾値以下で,直接的なエグ味の発生原因ではないと考えられた。