著者
田口 こゆき
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床カウンセリングルーム
雑誌
関西大学心理臨床カウンセリングルーム紀要
巻号頁・発行日
vol.1, pp.67-73, 2010-03

インテーク面接は、相談機関を訪れるクライエントと援助者が初めて出会う場である。援助者からみたインテーク面接の目的は、クライエントが抱えている悩みや問題の様態を知り、有効な援助を行っていくための見立てと方針を立てることであるが、本稿では、まずクライエント理解のために重要と考えられる枠組について概観し、またインテーク面接が治療的変化のスタートとしてどのような機能を果たすことができるかについて、Hill, C. E.のヘルビング・スキル理論をもとに論考した。インテーカーとしては、クライエント理解に必要な情報を捉えるために何に注目するべきかといった枠組を念頭に置きつつ、クライエントの中で安心感や受け止めてもらえているという感覚が生じ、自分なりにできるだけ問題を振り返って話せたと感じられるように話を聴いていくことが大切であろう。そのことによってHill, C. E.のいう自己探索のプロセスがクライエントの内面で進み始めるとともに、協働関係を構築していく一歩が踏み出せるのではないかと考えられる。
著者
中田 行重
出版者
関西大学臨床心理専門職大学院 心理臨床カウンセリングルーム
雑誌
関西大学心理臨床カウンセリングルーム紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-80, 2011-03

わが国におけるアディクション(嗜癖)の臨床について文献をもとに概観した。アディクションは家族からだけでなく、精神科医や臨床心理士など専門家からも当人の人格の問題と見られがちであるが、これと言った定式化された援助方針がなく、社会や経済とも絡む厄介な病気である。先ず、アディクションとは何かについて現象と診断の問題、病理学の推移について概観した。次に、精神障害とアディクションとの重複傷害、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬やSSRIという処方薬物へのアディクション、社会的機能の喪失の観点からアディクションの持つ深刻な複合性についてまとめた。更に、アディクション発症の危険因子について生物学的視点と家族論的視点から紹介し、最後にアディクションに対して最近の提唱されることの多い治療としてグループ療法(自助グループあるいは集団療法)があることを紹介した。