著者
近藤 真由
出版者
日本音楽医療研究会
雑誌
音楽医療研究 (ISSN:18832547)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.33-40, 2014-12-11 (Released:2014-12-18)
参考文献数
6

音楽療法の有効性は、主観的には明らかであってもその効果を客観的に示すことは容易ではない。しかし、エビデン スを確立していかなくては音楽療法が医療の代替、補助療法として認められることは難しい。そこで、先行研究で用いられてきた指標について概説し、筆者自身の研究結果とも合わせ、音楽療法の有効性を評価するに適した客観的指標について探索した。その結果、音楽療法の効果評価に適した指標の条件として、簡便で、侵襲の少ない方法で測定できる指標が望ましいことから、唾液で測定可能な生化学指標であるIgA、クロモグラニンA、コルチゾール、心電図R-R 間隔解析によって測定可能な自律神経指標が、評価指標として有用であるとの知見を得た。
著者
馬場 存
出版者
日本音楽医療研究会
雑誌
音楽医療研究 (ISSN:18832547)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.14-26, 2011 (Released:2011-12-21)
参考文献数
29

緊迫感と自閉の強い統合失調症3 例に対し、1 ~2 週に1 回、数年にわたり個人音楽療法を施行した。既成曲の歌唱・聴取の形で音楽に没入する時期を経て緊迫感と自閉が軽減したことから(1)音楽体験への没入、(2)それが患者の好む既成曲であること、に意義が見出せた。(1)はイントラ・フェストゥム(木村)や意識野の解体(Ey H)に照合可能で、Ey H のいう急性精神病の病像に近縁の状態をもたらして自閉を緩和し、将来がわからず不安・緊張をもたらす状態に正統な解決を与える構造(Meyer LB)をなす(2)の音楽がアンテ・フェストム的意識などに基づく不安や緊張を解決して、自閉的でない心的態勢に移行させるという機序が想定された。
著者
馬場 存
出版者
日本音楽医療研究会
雑誌
音楽医療研究 (ISSN:18832547)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.13-37, 2008 (Released:2009-11-20)
参考文献数
56
被引用文献数
2

統合失調症の概略を、その歴史、症候学、病態、治療について解説した。特にシュナイダーの一級症状、自我障害、基本障害、陰性・陽性症状、認知障害、ストレス脆弱性モデル、器質力動論に力点を置いた。次に英語圏の統合失調症の音楽療法の報告を紹介し、筆者の担当した例を踏まえて統合失調症の音楽療法の奏効機序について仮説を議論した。さらに、今後望まれることとして、量的研究はむろん、その適応や技法の選択、精神病理学的モデルの構築を目指した研究の必要性を論じた。