著者
桑折 道済 野々村 美宗 豊田 成人 宮島 亜佐美 井上 亮 川端 庸平
出版者
公益社団法人 日本化学会 コロイドおよび界面化学部会
雑誌
Colloid & Interface Communications (ISSN:27585379)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.3-18, 2023-12-10 (Released:2023-12-10)

C&I48-2の特集では、学生会員を対象として「本誌で読んでみたい記事・企画」のアンケートを実施した。その結果、「コロイド・界面化学分野が企業・技術・製品にどう活かされているか」知りたいという意見をいただいた。そこで本特集では、コロイド界面化学が世の中にどのように活かされているのか、その中でも我々が常日頃使っている「五感(視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚)」に関連する取り組みを紹介したい。企業とのつながりが強い本部会において、コロイド界面化学の知見が日常生活に活かされていることをなんとなく感じているかもしれない。しかしながら、具体的にどういったサイエンスによって実現しているかと問われると、明確には説明できないように思われる。本特集では5名の先生方に、「◯覚とコロイド界面科学」というテーマで特集記事を寄稿いただいた。◯の部分には、視・聴・味・触・嗅が入り、それぞれを5名の先生に担当いただいた。本特集を通じて、五感に響く「コロイド界面科学」の世界を味わってもらえれば嬉しく思う。 〔1〕視覚とコロイド界面科学 千葉大学 大学院工学研究院 桑折 道済印象派の画家クロード・モネは、同じ風景を、時間帯や季節を変えて何枚も描いた。当たる光の違いにより、1枚として同じ絵はない。色は、物体にぶつかって反射、あるいは透過した光が眼に入った際に、光の情報をもとに脳が作り出す感覚である。視覚と色は密接に関わっている。本稿では、コロイド界面科学的な手法で作製して、はじめてヒトが認識することができる色に焦点をあてて、最近の研究事例を紹介する。 〔2〕ヒトが感じる触覚と界面化学 山形大学 学術研究院 野々村 美宗ヒトはモノに触れた時、さまざまな触感を感じ取る。われわれは、柔らかい皮膚の表面でさまざまな摩擦現象が起こることがこの多彩さと繊細さの一因なのではないかと考えた。本稿では、フォースプレートで皮膚表面に加わる力学的刺激を見積もるとともに、指モデル接触子が正弦運動で摺動する触覚センシングシステムを用いてモデリングし、しっとり・さらさら感や保湿した皮膚の触感を解析した成果を紹介する。 〔3〕肌特徴の可聴化によるインタラクションシステム 株式会社資生堂 みらい開発研究所 豊田 成人肌の画像から特徴を抽出して、聴覚情報である音楽に変換するインタラクションシステムを開発した。本システムはマイクロスコープによって肌の拡大画像を取得し、画像解析によって特徴量を取得する。その特徴量を用いて音楽データを制御することで、その肌の状態にあった楽曲を生成することができる。本システムを展示会にてデモンストレーションした結果、肌の評価をより実感してもらうことができた。 〔4〕衣料用柔軟剤におけるカプセル化香料の分散安定化技術 ライオン株式会社 研究開発本部 宮島 亜佐美・井上 亮近年、ドラッグストア等で見かける衣料用柔軟剤には、柔軟効果のみならず香りの持続や消臭機能を訴求したものが多くなっている。これらの機能発現にはカプセル化香料が活用されているが、製剤化においては分散安定化が課題となる。そこでレオロジー特性評価に基づき種々検討した結果、カプセル化香料の分散安定性および良好な使用性を両立する基材を見出した。ここでは、検討した基材のうち特定のデキストリン誘導体に着目し、衣料用柔軟剤における分散安定化のメカニズムに関して、レオロジー特性および溶存状態の両面から解析した結果について紹介する[1]。 〔5〕コロイド分散系としての食品とトライボロジー 酪農学園大学 川端 庸平
著者
藤井 英司 中村 竜太 大久保 義真 久住 孝幸 落合 剛 濱田 健吾 小林 慶一 石黒 斉 波多野 諒 中野 万敬 山中 基資 松井 則男
出版者
公益社団法人 日本化学会 コロイドおよび界面化学部会
雑誌
Colloid & Interface Communications (ISSN:27585379)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.2-19, 2023-03-10 (Released:2023-04-05)

国内には国立研究開発法人等の国立の研究機関だけでなく都道府県ならびに市立の研究所・センター(地方公設試験研究機関等)などが数多くあります。特に地方の研究所・センターは各地域の特色を生かした・地域の発展を支える研究・開発をされてきておられます。また、これらの研究所・センターにおいてコロイド・界面化学関連の研究についても数多くなされております。その一端をご紹介いたします。このご紹介を通して、各センター・研究所で研究をしている研究者の皆様方と本部会との交流の足掛かりともなればとも考えております。今回、岡山、秋田、神奈川、名古屋の各地域において、地域の産業・学術を担う研究組織である、岡山県工業試験センター、秋田県産業技術センター、神奈川県立産業技術研究所(KISTEC)ならびに名古屋市工業研究所におけるコロイド・界面化学分野の研究を紹介いたします。 〔1〕セルロースナノファイバー素材の界面制御技術を利用した金属ナノ粒子との複合化に関する研究 岡山県工業技術センター 応用技術部 食品・繊維科 藤井 英司岡山県工業技術センターの業務とナノ材料の複合化に関する研究事例を紹介する。「高圧湿式ジェットミル」を用い、マイクロ空間内での高剪断力およびキャビテーション効果を利用した複合化手法を開発した。セルロースナノファイバー素材の界面を制御し、金属ナノ粒子を複合化させたナノ複合体を作製し、特性評価をおこなった。〔2〕微小液滴撹拌を可能とする電界撹拌技術の開発とその応用 秋田県産業技術センター 中村 竜太・大久保 義真・久住 孝幸 〔3〕抗菌・抗ウイルス効果から空気清浄機まで ~光触媒評価総合サポート 地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC) 溝の口支所 川崎技術支援部 落合 剛・濱田 健吾 地方独立行政法人 神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC) 殿町支所 研究開発部 小林 慶一・石黒 斉(地独)神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)は、神奈川県内中小企業を中心とする産業界から信頼される公設試験研究機関として、県内産業と科学技術の振興を図ることにより、豊かで質の高い県民生活の実現と地域経済の発展に貢献しています。本稿では、KISTECの溝の口支所と殿町支所が連携し、中心となって展開している「光触媒評価総合サポート」の概要と、主な研究成果を紹介します。 〔4〕液面プラズマを活用した金ナノ粒子担持複合粉体の調製 名古屋市工業研究所 システム技術部 製品技術研究室 波多野 諒気中電極と液面との間でプラズマを発生させる液面プラズマ処理技術を用いて、水溶液中で金イオンを還元し、アルミナ等の粉体上に粒径10~20nm程度の金ナノ粒子を均一分散担持させる手法を見出した。得られた金ナノ粒子担持複合粉体は、金ナノ粒子の表面プラズモン共鳴に由来する鮮やかな赤色の色調と抗菌性を示した。 〔5〕ゲル化と結晶化を利用した超撥水表面の形成 名古屋市工業研究所 材料技術部 中野 万敬・山中 基資接触角が150°以上である超撥水表面を植物由来原料から作製する手法を開発した。この表面は、低分子ゲル化剤が形成する一次元の自己組織体と脂肪酸が形成する微結晶とで構成された階層的な凹凸構造により超撥水性を発現している。本稿では、超撥水表面形成のメカニズムとこの表面が摩耗した後の接触角の自己復元性について述べる。 〔6〕名古屋市工業研究所 表面技術研究室 名古屋市工業研究所 松井 則男