著者
畠山 衛
出版者
国際基督教大学 日本語教育研究センター
雑誌
ICU日本語教育研究 = ICU Studies in Japanese Language Education (ISSN:18800122)
巻号頁・発行日
no.8, pp.3-17, 2012-03-31

原因・理由を表す接続助詞「から」「ので」は多くの場合、置換可能である(前田2000、小西2010)。しかし、例えば授業を休んだ理由を聞かれた学生が「頭が痛かったから休みました」と言うと欠席の正当性を主張するように聞こえ、学習者が意図せずに語用論的誤用(Thomas, 1983)を産出することにつながってしまう危険性があるため、両者の使い分けは日本語学習者にとって重要な学習項目と言える。 先行研究に見られた依頼や誘いに対する断りに加え、提案に対する断り、指示、助言、報告などの言語行為における使い分けについて、日本語学習者(34 名)と日本語母語話者(46名)に対して二者択一のアンケートを実施し、一部の学習者(14 名)に対して聞き取り調査を行った。その結果、母語話者の選択は高い収束を示す項目もあったのに対し、学習者はほとんどの場合において母語話者の多数派と同じ選択をする傾向があるものの、母語話者に比べて収束度が低い傾向があった。さらに、「から」の習得が「ので」の習得に先行する可能性が示唆された。学習者は話す相手や場面によって求められる丁寧さ、前接形式などをもとに使い分けを判断していた。母語話者のほとんどが「ので」を選択したような改まり度の高い場面での依頼、詫び、依頼に対する断り、誘いに対する断りなどで、特に文末に言い切らない「ので」の使用の促進が望まれる。