著者
三上 京子
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究 (ISSN:18800122)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.49-63, 2006

本研究は、豊かな表現力を持つ語群として日本語に豊富に存在し、日常生活において多用されるオノマトペ(擬音語・擬態語)に焦点をあて、初級終了から中級段階にある学習者がオノマトペを用いた様々な表現に触れることができるよう、日本語教育のための基本オノマトペの選定とその教材化の試案を提示するものである。基本語の選定に際し、始めにオノマトペとは何かというオノマトペ定義の問題を先行研究を概観しながら論じる。次に、日本語教育における基本語彙に関する文献をもとにして、日本語の初級・中級教科書および新聞記事、雑誌記事のコーパス、シナリオ集等の一般言語資料のデータも参考にしながら、日本語教育のための基本オノマトペを選定する。さらに、選定した語を学習・指導する際のリソースとして利用できるよう、基本オノマトペの教材化を試案として提示する。この教材化では、従来の辞書における語義説明では不十分であった点を改めるべく、『コウビルド英語学習辞典』をモデルとして、文脈を伴った長い例文の中でその語の意味を記述するという方法を採用する。また、オノマトペは書き言葉より話し言葉においてより多く用いられるということから、日常的な場面の中でオノマトペが使われている「会話例」も提示する。この基本オノマトペの教材化の一部は、国立国語研究所e-Japanのインターネットサイト(http://jwehkokkerLgo.jp/gitaigo/index.htm1)において公開中である。
著者
畠山 衛
出版者
国際基督教大学 日本語教育研究センター
雑誌
ICU日本語教育研究 = ICU Studies in Japanese Language Education (ISSN:18800122)
巻号頁・発行日
no.8, pp.3-17, 2012-03-31

原因・理由を表す接続助詞「から」「ので」は多くの場合、置換可能である(前田2000、小西2010)。しかし、例えば授業を休んだ理由を聞かれた学生が「頭が痛かったから休みました」と言うと欠席の正当性を主張するように聞こえ、学習者が意図せずに語用論的誤用(Thomas, 1983)を産出することにつながってしまう危険性があるため、両者の使い分けは日本語学習者にとって重要な学習項目と言える。 先行研究に見られた依頼や誘いに対する断りに加え、提案に対する断り、指示、助言、報告などの言語行為における使い分けについて、日本語学習者(34 名)と日本語母語話者(46名)に対して二者択一のアンケートを実施し、一部の学習者(14 名)に対して聞き取り調査を行った。その結果、母語話者の選択は高い収束を示す項目もあったのに対し、学習者はほとんどの場合において母語話者の多数派と同じ選択をする傾向があるものの、母語話者に比べて収束度が低い傾向があった。さらに、「から」の習得が「ので」の習得に先行する可能性が示唆された。学習者は話す相手や場面によって求められる丁寧さ、前接形式などをもとに使い分けを判断していた。母語話者のほとんどが「ので」を選択したような改まり度の高い場面での依頼、詫び、依頼に対する断り、誘いに対する断りなどで、特に文末に言い切らない「ので」の使用の促進が望まれる。
著者
二宮 理佳 金山 泰子
出版者
国際基督教大学 日本語教育研究センター
雑誌
ICU 日本語教育研究 = ICU Studies in Japanese Language Education (ISSN:18800122)
巻号頁・発行日
no.6, pp.3-24, 2010-03-31

本稿では、テレビ映像を用いたインタビュー調査を3名の被験者を対象に実施し、「はい」「ええ」の使い分け、および「ええ」の機能について考察を試みた。調査の結果、先行研究および筆者らの考察結果が再確認されると共に、被験者から新たな示唆が得られた。まず、「はい」には、先行研究で言われているように、「フォーマルで丁寧」、「談話設立・維持・進行」の機能、「ええ」には「同意・共感」の機能があると認識されていることが確認された。さらに筆者らがこれまで考察してきた「主張を込める」、「既知の情報に対する応答」などの「ええ」の機能を認識していると思われる回答が見られた。また「ええ」の認識には個人差があるということや、「はい」「ええ」どちらかのみを使うとその応答詞の持つ機能がマイナスに作用する結果になってしまうという側面も再確認された。「はい」のみならば「固い」、「楽しさがない」、「話しにくい」などの被験者のコメントに、それぞれの応答詞の機能がマイナスに現れてしまった様子が見てとれる。さらに、被験者は3名とも「はい」「ええ」を適宜織り交ぜて使用することが適切で自然だと指摘している。これは、先行研究および筆者らのこれまでの調査結果からは見出されなかった新しい点である。
著者
半田 淳子
出版者
国際基督教大学 日本語教育研究センター
雑誌
ICU 日本語教育研究 = ICU Studies in Japanese Language Education (ISSN:18800122)
巻号頁・発行日
no.9, pp.3-12, 2013-03-31

本研究は、上級の日本語学習者を対象に、日本人の名字ベスト200 に関して、難易度と正答率を調査したものである。具体的には、中国・台湾・韓国からの留学生16 名に、ベスト200 の名字の読み方を記述してもらった。その結果、1)ベスト50 の名字の正答率は高いが、下位になるほど正答率が下がるわけではない、2)正答率が低い名字に使用されている漢字は、上級レベル以上の漢字とは限らない、3)名字に関する知識と滞在月数には、相関関係が認められない、以上のことが明らかになった。日本語学習者にとって日本人の名字が難しいのは、漢字の難易度に原因があるのではなく、音読みと訓読みの使い分けや濁点の有無の判断に加え、名字に特有の読み方や例外の多さが関係している。名字を正しく読めることは、日本での就職を希望する留学生にとって重要なことであり、今後は漢字の指導にも積極的に取り入れていくべきである。
著者
畠山 衛
出版者
国際基督教大学 日本語教育研究センター
雑誌
ICU 日本語教育研究 = ICU Studies in Japanese Language Education (ISSN:18800122)
巻号頁・発行日
no.8, pp.3-17, 2012-03-31

原因・理由を表す接続助詞「から」「ので」は多くの場合、置換可能である(前田2000、小西2010)。しかし、例えば授業を休んだ理由を聞かれた学生が「頭が痛かったから休みました」と言うと欠席の正当性を主張するように聞こえ、学習者が意図せずに語用論的誤用(Thomas, 1983)を産出することにつながってしまう危険性があるため、両者の使い分けは日本語学習者にとって重要な学習項目と言える。 先行研究に見られた依頼や誘いに対する断りに加え、提案に対する断り、指示、助言、報告などの言語行為における使い分けについて、日本語学習者(34 名)と日本語母語話者(46名)に対して二者択一のアンケートを実施し、一部の学習者(14 名)に対して聞き取り調査を行った。その結果、母語話者の選択は高い収束を示す項目もあったのに対し、学習者はほとんどの場合において母語話者の多数派と同じ選択をする傾向があるものの、母語話者に比べて収束度が低い傾向があった。さらに、「から」の習得が「ので」の習得に先行する可能性が示唆された。学習者は話す相手や場面によって求められる丁寧さ、前接形式などをもとに使い分けを判断していた。母語話者のほとんどが「ので」を選択したような改まり度の高い場面での依頼、詫び、依頼に対する断り、誘いに対する断りなどで、特に文末に言い切らない「ので」の使用の促進が望まれる。
著者
二宮 理佳
出版者
国際基督教大学
雑誌
ICU日本語教育研究 (ISSN:18800122)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.22-42, 2004

本稿は、初中級のクラスにおける本活動、「日本語によって観客を笑わせる」ことを課題の中心に据えたスキット活動を情意・動機づけの側面から検討する。学習者は過去6回の実践において積極的な取り組みを見せ、高い動機づけが認められた。そこで情意面・動機づけに効果的な役割を果たした要因を探るため、本活動の過程及び結果を、教師の観察と学生の感想から分析、そして課題である「笑い」の役割及び機能の分析・考察した結果、高い動機づけを引き出した要因と、「笑わせる」という課題の中で「笑い」の果たした6つの役割(課題への動機づけ・真の感情の喚起・課題の達成の可視化他)が明らかになった。課題の中心に「笑い」を据えたことが、動機づけに有効に作用し、学習の活性化に寄与していたのではないかと考えられる。最後に動機づけの高いクラス活動をデザインする上での有意な視点7点を提案する。