著者
Hiroyuki Arai Mutsuo Yamaya Takashi Ohrui Satoru Ebihara Takae Ebihara Kazushi Nakajo Hidetada Sasaki
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.467-472, 2002-10-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

誤嚥性肺炎を発症する高齢者では, 高率に脳血管障害, 特に大脳基底核領域に脳梗塞が見出される.この場合の脳梗塞は, 新しいものであっても陳旧性のものであっても, また症候性であっても無症候性であっても構わない.このような患者では, 嚥下反射と咳反射の両者の低下により, 誤嚥特に夜間の不顕性誤嚥により肺炎の成立にいたると考えられる.嚥下反射と咳反射は, 少なくとも2つの神経伝達物質, すなわちドーパミンとサブスタンス-Pによって支えられている.進行したアルツハイマー病患者も大脳基底核障害などにより誤嚥性肺炎を発症する.進行したアルツハイマー病患者において, major tranquilizerの使用と無症候性脳梗塞の合併は誤嚥性肺炎を誘発する危険因子であるため問題行動に対するmajor tranquilizerの使用には細心の注意が要求される.塩酸アマンタジン, ACE阻害薬, 抗血小板剤の使用また歯ブラシなどによる簡便な口腔ケアは肺炎の予防に役立つばかりでなく高齢者医療費削減にも貢献すると思われる.
著者
Shigeko Harigai Yoshisato Tanaka Yoshimi Mitani Yumi Shishido
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
The Japan Journal of Logopedics and Phoniatrics (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.14-21, 1996-01-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
18

本症例は母体を保護するため在胎25週, 帝王切開にて体重800gの超未熟児で出生した.両親は死産もしくは脳損傷の合併を予告されたため「脳損傷」にこだわり子供の発達に希望が持てず, 親子関係 (母子関係) が育たなかった.その結果本児の心身の発達は遅れ, 難聴による言語発達の遅れも加わりコミュニケーション障害と情緒障害をおこした.母親は本児の育児に自信をなくし, 施設での養育を希望した.児童相談所の措置で施設に入所させ親子を分離した結果, 母親は落ち着き本児は補聴器を装用し言語訓練により言語を獲得した.就学は聾学校に寄宿生として入学したが, 聾学校寄宿生の規則である週末の帰宅をめぐり親子関係が悪化し不登校となった.現在は児童施設に入所し聾学校に通学している.本児は両親, 医療関係者や教育関係から, 適切な処遇を受けなかったため心身の発達の遅れに加え, 重い情緒障害とコミュニケーション障害を残した.この発達経過は, 周産期医療のあり方と未熟児を育てる家族の支援の必要性, さらに親子関係の発達に及ぼす影響の重大さを指摘している.