著者
田中 佐千子
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

平成16年度は,観測された地震データから地球潮汐による地震トリガー作用の特徴およびその発現条件を明らかにすることを目的とし,統計的手法に基づいて以下の3つの研究を行った.1.日本周辺の地震データについて,地震発生時刻における潮汐応力の圧縮軸方位に着目し,地球潮汐と地震発生の関係を調査した.その結果,両者の間に有意な相関が認められる領域が存在することを発見した.それらの領域について,地震発生が集中する潮汐応力の圧縮軸方位の抽出を試みた.抽出した方位を震源メカニズム解から推定されるテクトニック応力の方位と比較・検討し,地球潮汐による応力変化がその領域内で支配的な応力場を増大させる方向に働く際に地震がトリガーされる可能性を示した[Tanaka et al.,2004].2.全世界で発生した浅発逆断層型地震について,地球潮汐によって断層に加わる応力変化の振幅に注目し,地球潮汐と地震発生の関係を調査した.その結果,加わる応力変化の振幅が大きいほど両者の間に強い相関が認められることが明らかとなった.地震発生は地球潮汐による応力変化が断層のすべりを促進する位相付近に集中する.これらの特徴は,地球潮汐による応力変化が地震発生に無視できない影響を与えていることを強く示唆している[Cochran et al.,2004].3.全世界のプレート沈み込み境界で発生した大地震11個について,その震源域近傍における地球潮汐と地震発生の関係を調査した.その結果,調査した11例中6例で,本震の発生に先立つ数年間に顕著な相関が現れていたことが明らかとなった.本震発生後,両者の相関は消滅した.高い相関が認められた本震発生前の期間では,地球潮汐による応力変化が断層のすべりを促進する位相付近に地震発生が集中しており,地球潮汐による地震トリガー作用の観測が大地震に至る応力蓄積過程の監視に有効である可能性が示された[AGU Fall Meeting 2004で発表].

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