- 著者
-
福島 亜理子
仁科 エミ
- 出版者
- 江戸川大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
本年度は、可聴域上限をこえる超高周波成分を豊富に含む音が深部脳活性を高め心身を賦活する現象(ハイパーソニック・エフェクト)の発現強度が、超高周波成分の周波数に応じて変化する現象について検討する上で、より適切な情報構造を有する異なる音源においても同様に観察されるかどうかを確認するために、先行研究とは異なる音源を開発し、脳波計測実験を行った。まず、超高周波成分が豊富に含まれることが多い熱帯雨林環境音に着目し、アフリカやボルネオの熱帯雨林で超高密度収録された数十に及ぶ音源アーカイブについて、録音状態や超高周波成分の含有状況を周波数分析を行って確認した。その結果、計画している分割帯域毎にほぼ同程度の信号強度を有する実験用音源に適すると判断された音源を見出し、超高密度編集機器を用いて、100kHzに及ぶ超高周波成分を豊富に含む音源を実現した。この音源によるハイパーソニック・エフェクト発現を確認するために、楽器音を用いた先行研究に準じて、48kHz以下の周波数成分と48kHz以上の周波数成分とに分割して呈示し、被験者の脳波α2成分から基幹脳活性化指標を算出し比較した。その結果、48kHz以下の成分のみを呈示した場合に比べ、48kHz以上の超高周波成分を合わせて呈示した場合に、基幹脳活性化指標が増加する傾向を見いだした(p=0.073)。このことは、先行研究において、48kHzより高い超高周波を用いた場合に、より低い成分を用いた場合に比較して基幹脳活性化指標が有意に増大したことと矛盾しない。こうして、異なる音源においても、少なくとも超高周波成分を48kHzを境に大きく分割した場合に、ポジティブな効果とネガティブな効果を検出しうることや、呈示時間を楽器音よりも長く設定した方が安定した結果が得られることなどが示され、次年度以降のより詳細な分析に向けた準備を整えることができた。