著者
和田 健
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

本研究は、戦時体制下にさしかかる1930年代後半を中心に、生活習俗に関わる改善指導が、どのような文脈のもとで策定されていたかを検討するものである。特に農山漁村経済更生運動における更生計画書に与えた生活改善事項記述の影響を考察することを中心に行った。本年度は、通俗教育の官製運動における生活改善運動で刊行された『生活改善の栞』および『農村生活改善指針』に記載された冠婚葬祭に関わる生活改善指導の記述について考察を行った。『生活改善の栞』はおもに、都市部に居住する中産階層を対象とした生活のあり方を示したもので、西洋の生活様式を取り入れる記述を多く含んでいる。例えば婚姻や葬式に関わる費用が西洋諸国での平均的な金額を示した上で、日本では年収をはるかに上回る費用のかけ方をしていることを数的に示した上で、より費用を抑えて儀式のあり方を示している。ただし『農村生活改善指針』では、必ずしも農村の民俗慣行を完全に改変していくことは難しく、費用は抑えることを記載しているが、数的な根拠よりも具体的な冗費の事例をあげて費用の抑制を示している。都市部に居住する人たちと農村に住む人たちでの事情を分けて記述の仕方を変えている。冠婚葬祭の他に衣食住のあり方にも言及していることと関連するが、これらの通俗教育に関わる生活改善指導には家政学研究者の影響も強い。活動の母体である生活改善同盟会の委員も家政学研究者が多くを占めている。当時のより近代的な生活様式を拡げていく中で大変影響が強かったことが伺え、ひいては更生計画書に生活改善事項を記しているものは、この生活改善同盟会刊行の指導書が典拠になっている例も多く見かけるのである。

言及状況

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戦時体制下の官製運動における生活改善指導と通俗教育の交差に関する民俗学的研究 https://t.co/qrJwwtl6vI

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