著者
伊藤 栄明
出版者
統計数理研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

幾何学的な対称性を群論をもちいて記述する方法はよく知られている. 3次元空間における周期的な構造について対称性を記述する230個の群があり, それらは空間群と呼ばれている. 結晶における原子の配列を解析する際に空間群はもちいられる. 結晶の対称性は230の空間群のいずれかによりあらわされる. 対称性の統計的分布について, 球の充填あるいは楕円球の充填等にもとづいたモデルが考えられる. 本研究ではこのような幾何学的構造を直接考えずに群とその表現にもとづいたモデルについて議論した. 個々の結晶の対称性が何になるかという問題は物理的, 化学的な議論にもとづいて行われるべきものであるが, 多数の結晶について対称性についての分布をしらべるには統計的モデルを考えうる. 群を値としてとる確率分布という見方が可能である. 群を値としてとる確率分布あるいは確率過程という見方でとらえることのできる現象は多くあると思われる. 群を値としてはる確率過程も興味ある今後の課題と思われるがこれについては別の機会に行いたい. 幾何学的対称性と平行移動の操作を考慮に入れずに記述する点群といわれている32個の群がある. それらは定点0を通る軸による回転及び定点0についての反転からなる有限群である. 点群は結晶の形態を記述する際にもちいられる. 点群における対称操作に平行移動の操作を組み合わせたものが空間群であり, 各空間群は32個の点群のいずれかにもとづいて構成されている. 本研究においては各空間群に対応する点群についての統計的分布を考えた. 多く存在している群は, 群として生成されやすいということと考え, 生成されやすさということについてのモデル化をこころみた. 計算機をもちいてこのモデルにより得られる結果とデータを比較した. さらにモデルについての確率論的性質をしらべた.

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