著者
田島 惇 中野 優 牛山 知己 大田原 佳久 太田 信隆 阿曽 佳郎
出版者
浜松医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1987

本研究者らは合計152回(生体81、死体71回)の腎移植を施行してきた。なお本研究期間では、32例の死体腎移植を施行した。われわれの症例では、全例心停止後の腎提供のため、述後急性尿細管壊死(ATN)は不可避であった。この自験例において、ATN中の適切な免疫抑制法とその間の管理を中心に、検討した。1)術後ATN中の免疫抑制法について:シクロスポリン(Cs)の登場により、死体腎移植成績は飛躍的に向上した。Csが入手可能となってから、Cs(12mg/kgで開始)とlow doseのステロイド(60mg/dayより漸減)で免疫抑制を行ったが、1年間の死体腎生着率は80%弱と著明に向上した。Csの投与量は、主に血中のCs濃度および移植腎生検像から調節した。免疫抑制状態の指標としては、リンパ球サブセットOKT4/8が有用であった。この比が0.6以下の場合は、過剰な免疫抑制状態であると考えられた。拒絶反応の治療としては、従来のステロイド療法に加え、OKT3の使用が可能となったが、その有用性は高く、優れた臨床効果を示した。2)ATN中の管理:ATN中移植腎合併症の診断における超音波移植腎針生検は極めて有用である。生検像のDNA polymerase-αによる免疫組織化学により、ATNからの回復状態を評価することができた。本研究者らの開発したリンパ球除去を、ATN中のステロイド抵抗性の拒絶反応の治療に応用し、優れた効果が得られた。またリンパ球除去システムを、従来のシステムより安全かつ容易なシステムへの改善の試みを行った。Cs血中濃度測定では、FPIA法がベッドサイドで簡便にできる点が優れている。Cs腎毒性のレニン-アルドステロン系の関与が示唆された。ATN中のCMV感染症に対するガンシクロビル、白血球減少に対するColony Stimulating Factorの有用性が確認された。死体腎の潅流液としてUW solutionを用いた場合、従来のコリンズ液よりATNの期間が短縮される可能性が示された。静岡県の死体腎提供の分析をした。

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編集者: Takuro1202
2014-05-29 15:02:42 の編集で削除されたか、リンク先が変更された可能性があります。

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