著者
井口 正人 2015年口永良部島火山噴火総合研究グループ
出版者
京都大学防災研究所自然災害研究協議会
雑誌
自然災害科学総合シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
no.53, pp.16-23, 2016-09-22

平成28年9月22日(木)-23日(金), 於 : 静岡県地震防災センター2015年5月29日に口永良部島の新岳火口において火山噴火が発生し, 我が国の火山において初めての特別警報(噴火警戒レベル5)が発表され, 島外への避難が行われた。2014年8月3日にも噴火が発生しており, それ以降, 火山噴火発生の前兆過程である火山ガス放出量の増加, 地盤変動, 火山性地震活動の活発化は段階的に進行した。2015年5月の火山噴火では噴煙高度は火口上9km以上に達し, 火砕流も2㎞超離れた海岸線あたりまで到達した。噴火に伴う爆発地震は2014年噴火が大きいが, 火山灰放出量や空気振動の大きさを考慮した噴火の規模は2015年噴火が大きい。火山灰の大気中の拡散は移流・拡散モデルで再現できる。また, 火砕流についてもシミュレーションを行った。火砕流の堆積後, 土石流が発生している。現地調査によって, 浸透能などの特性を調査した。島外への脱出を含む避難計画および避難の実施に2014年噴火の経験が極めて重要な役割を果たした。2015年5月29日の噴火の6日前に発生した有感地震後に, 国および自治体は必要な措置を講じたが, 住民の避難についての意識との乖離が大きい。噴火後に, 火山性地震の活動は低下し, 火山ガスの放出量は低下した。2015年10月には警戒区域を新岳火口からおよそ2.5kmとする決定がなされ, 多くの島民の帰島が実現した。さらに, 2016年2月ごろから火口周辺の地盤の収縮傾向が検知されたので, 警戒区域が2㎞に縮小され(噴火警戒レベル3に引き下げ), 避難が解除された。
著者
山本 晴彦
出版者
京都大学防災研究所自然災害研究協議会
雑誌
自然災害科学総合シンポジウム講演論文集
巻号頁・発行日
no.55, pp.31-41, 2018-09-18

2017年9月17日は台風18号や活発な前線の影響で豪雨となり, 大分県と宮崎県の県境の祖母山系を中心に17日の日降水量が500mmを超える豪雨域が北西-南東方向に約20km, 北東-南西方向に約10kmの楕円形状の豪雨域が形成されていた。大分県中南部の津久見市では17日の9時前後に第1のピーク, 11時過ぎに20mm/10分間を超える豪雨に見舞われ, 台風接近時の13-16時には東寄りの風が卓越して約10mm/10分間の強雨が継続し, 日積算降水量427mmを記録した。本豪雨により津久見川や支流の彦の内川が氾濫し, 標高が低い場所や両河川の合流点付近では最大150cm前後の浸水痕跡が確認され, 住家の半壊, 浸水被害が相次いで発生した。本災害による大分県内での住家被害は3, 359棟に達し, 洪水災害としては近年では甚大な被害であった。また, 隣接する宮崎県北部の北川水系でも洪水災害に見舞われ, 前年の2016年台風16号の浸水深を超える地域も見受けられた。