著者
小山 徹平
出版者
公立大学法人福島県立医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

○ 研究目的と方法福島医大版服薬自己管理モジュール施行患者(以下「参加群」)と、非施行(以下「非参加群」)患者に対して、服薬アドピアランスと治療転帰について調査し、心理社会的教育の効果を検討することを目的として、2001年7月からの病棟服薬教室参加者60名と、2000年から2001年の服薬教室施行前に入院していた不参加患者の中で、統合失調症圏・感情障害圏の患者211名を対象として選び、追跡調査をおこなった。彼らの退院後の社会適応状態、再入院の有無、その原因等についてのアンケートを施行し、可能な限り面接調査も施行した。またカルテから退院後の臨床経過を調査した。本研究は、福島県立医科大学倫理委員会の承認を受けて行われた。○ 研究成果・ アンケート調査で、回収され有効回答であったのは、参加群23名、非参加群40名であった。彼らの退院から6ヵ月後、1年後、2年後の社会適応状態・再入院・その原因について差は認められなかったが、入院前の状況による補正を行い精密に検討することが必要である。・ 面接調査でのSAI-J(病識・薬識尺度)の結果は、服薬アドピアランス・自分の病識ついては参加群(11名)の方が良好な結果であった。しかし、自分の入院時の病識についてや精神症状(主に妄想)の理解の問いでは、非参加群(28名)の方が良い部分もあった。・ カルテ検索については、2年後まで経過を追う事ができた参加群39名、非参加群90名(アンケート群を含む)を対象とした。参加群は江熊の社会適応尺度で6ヵ月後、1年後、2年後の結果が3.23→3.28→3.21と良くなっているのに対し、非参加群では2.62→2.62→2.72と若干ではあるが悪化している事が分かった。ただし、今回の結果は、入院前の状態が不揃いであるため、その情報も含め、さらに検討を進める計画である。