著者
松野 真
出版者
千葉県健康福祉部児童家庭課
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1研究目的本研究は、異性と付き合っている若者間の暴力(dating violence)の実態の把握やdating violenceに関する事項について,若年層の若者がどのように捉えているかについて明らかにすることで,今後のDV予防教育を効果的に進める要因について探ることを目的とした。2研究方法大学生255名(男子116名,女子139名)を対象に,DVやdating violenceの実態に関する質問紙を作成し実施した。また,上杉喬(1979)が提唱した感情イメージ調査法に基づき,DVやdating violenceに関連する10個の対象語(恋愛,結婚,デート,支配,セックス,無視,束縛,服従,暴力,対等)と8つの感情語(喜,望,愛,驚,悲,恐,怒,嫌)を対提示する「dating violenceイメージ調査票」を作成し実施した。調査票では,対象語と感情語のそれぞれをイメージさせ、両者がどのくらいピッタリするかを5段階で評価してもらった。10対象語ごとに,8感情の因子分析から抽出された第1因子(快-不快感情)の因子負荷量を重みづけとした8感情の合成得点である「感情価」を算出し,10対象語間におけるピアソンの積率相関係数を求め,対象語間の関連性について検討した。3研究成果10対象語ごとの感情価を基に,主因子法による因子分析した結果,固有値1.0以上を基準として2因子が抽出され,回転バリマックス解により「他者コントロール」(支配,服従,束縛,暴力,無視)と「親密さ」(対等,デート,恋愛,結婚,セックス)を反映する因子が得られた。因子間の関連性には,男女でその構造に差異が認められた。女性では、他者コントロール因子と親密さ因子には強い相関は無く,両者は独立した構造を示した。また,親密さに関する対象語では,対等が独立していることが特徴的だった。一方,男性では、他者コントロール因子と親密さ因子に強い負の相関があり,男性の方が,女性よりも暴力を通して相手をコントロールしやすい傾向にあると思われる構造が示唆された。特に,付き合い経験がある男性では,デートに対する感情イメージと暴力のそれとの間に強い負の相関があることが特徴的であった。以上のことから,一般的な若年層の男性において,潜在的に他者をコントロールすることと親密であることの関連性が強く,同様の特徴を有するDV加害者と一定の共通点を見出すことができた。従って,高校生や大学生等の若年層を対象に(特に男性),広くDV予防教育を実施する意義が確認された。