著者
小菅 成一
出版者
嘉悦大学研究論集編集委員会
雑誌
嘉悦大学研究論集 = Kaetsu University research review (ISSN:24322946)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.79-88, 2021-03

本稿で取り扱う事案は、「鎌倉ハム」のブランドを用いて食肉販売や食肉加工品等の製造販売業を営む会社(被告)の商号に「東京営業所長」を付加し、その名称を使用して鮪の取引を行っていた者の行為について、被告の責任が問題とされたものである。原告側は、被告の東京営業所長と称する者に鮪の取引に係る代理権を授与していたことに対する被告の責任のほか、その者が被告の商号に「東京営業所長」が付加された名称を使用して取引していたことにつき、被告は会社法9条に係る責任(名板貸責任)を負うべきであると主張した。これに対し裁判所は、代理権の成立については否定したものの、会社法9条に係る被告の責任は肯定した。本稿では、会社法9条(①商号使用許諾の有無、②商号の使用許諾者と被許諾者との営業の同種性、③取引の相手方(第三者)の重過失の有無、などの同条に係る問題)を中心に、本判決につき検討する。
著者
曽 丹 馮 雪梅 厳 清華
出版者
嘉悦大学研究論集編集委員会
雑誌
嘉悦大学研究論集 = Kaetsu University research review (ISSN:24322946)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.61-74, 2016-10

東アジアの近代化にとって、西洋文明の導入が大きな役割を果たしたことはよく知られているが、中国と日本は近代化の初頭、西洋文明の圧倒的軍事力の下で、富国強兵のために、西洋に対抗する手段として、内容的に極めて似通ったスローガン「中体西用」と「和魂洋才」を提唱したにもかかわらず、その結果から見れば、日本は東アジアの諸国に先駆けて近代化を遂げたのにひきかえ、中国の近代化は著しく遅れていた。そこで、その深層にある原因について改めて検討し直す必要が生じていると思われる。 本稿では、まず「中体西用」と「和魂洋才」思想形成の原因分析の上に、その思想形成の過程と発展軌跡を浮き彫りにした。そして「中体西用」と「和魂洋才」思想の生まれた背景、具体的な内容、本質など幾つかの面から、両思想を比較しながら、両者の共通点と相違点について検討を行った上、近代化の過程において「中体西用」と「和魂洋才」の実際に果たされた効果の差異が生じた原因を探求してみた。