著者
小菅 成一
出版者
嘉悦大学
雑誌
嘉悦大学研究論集 (ISSN:02883376)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-19, 2007-04-30

商法では、客の来集を目的とする人的・物的設備を備えて、公衆の需要に応ずる取引を行う場屋営業者(ホテル、映画館等を営業する商人).は、客の携帯品について、(1)客から寄託を受けたにもかかわらず、場屋営業者が当該携帯品を滅失または毀損した場合には、それが不可抗力により生じたことを証明しない限り、損害賠償責任を免れることができないと規定(商法594条1項)し、さらに、(2)客が寄託をしない物品であっても、場屋中に携帯した物品が、場屋営業者またはその使用人の不注意により滅失または毀損した場合には、場屋営業者は損害賠償責任を負うと規定(同条2項)している。この場屋営業者の責任めぐる裁判例は、これまであまり多く見られなかったが、ここ最近では、ゴルフ場のクラブハウス内における貴重品ロッカーからの窃盗犯による財物の盗難とキャッシュカードの不正使用に関する事件が多発したことから、被害に遭った客が、ゴルフ場に対して場屋営業者としての責任を追及する訴訟が増えてきているという。そして、こうした裁判例の中には、まず貴重品ロッカーに携帯品を保管したことにつき、客と場屋営業者との間に寄託契約が成立するのか否かを検討し、その結果、寄託契約が成立しなくても、場屋営業者側に、貴重品ロッカー等の施設内の管理に不注意があった場合には、当該営業者に対し、商法594条2項に基づく善管注意義務違反を認めるものも出現してきている。本稿では、場屋営業者の責任に関する商法594条の規定の趣旨を確認した上で、当該規定に関する近時の裁判例を検討しつつ、場屋営業者には、例え客との間に寄託契約が成立しなくても、客が安心して携帯品を貴重品ロッカー等に預けられるようにするための施設に対する安全管理義務があると結論付けている。
著者
小菅 成一
出版者
嘉悦大学研究論集編集委員会
雑誌
嘉悦大学研究論集 = Kaetsu University research review (ISSN:24322946)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.79-88, 2021-03

本稿で取り扱う事案は、「鎌倉ハム」のブランドを用いて食肉販売や食肉加工品等の製造販売業を営む会社(被告)の商号に「東京営業所長」を付加し、その名称を使用して鮪の取引を行っていた者の行為について、被告の責任が問題とされたものである。原告側は、被告の東京営業所長と称する者に鮪の取引に係る代理権を授与していたことに対する被告の責任のほか、その者が被告の商号に「東京営業所長」が付加された名称を使用して取引していたことにつき、被告は会社法9条に係る責任(名板貸責任)を負うべきであると主張した。これに対し裁判所は、代理権の成立については否定したものの、会社法9条に係る被告の責任は肯定した。本稿では、会社法9条(①商号使用許諾の有無、②商号の使用許諾者と被許諾者との営業の同種性、③取引の相手方(第三者)の重過失の有無、などの同条に係る問題)を中心に、本判決につき検討する。
著者
小菅 成一 コスガ セイイチ Seiichi Kosuga
雑誌
嘉悦大学研究論集
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-19, 2007-04-30

商法では、客の来集を目的とする人的・物的設備を備えて、公衆の需要に応ずる取引を行う場屋営業者(ホテル、映画館等を営業する商人).は、客の携帯品について、(1)客から寄託を受けたにもかかわらず、場屋営業者が当該携帯品を滅失または毀損した場合には、それが不可抗力により生じたことを証明しない限り、損害賠償責任を免れることができないと規定(商法594条1項)し、さらに、(2)客が寄託をしない物品であっても、場屋中に携帯した物品が、場屋営業者またはその使用人の不注意により滅失または毀損した場合には、場屋営業者は損害賠償責任を負うと規定(同条2項)している。この場屋営業者の責任めぐる裁判例は、これまであまり多く見られなかったが、ここ最近では、ゴルフ場のクラブハウス内における貴重品ロッカーからの窃盗犯による財物の盗難とキャッシュカードの不正使用に関する事件が多発したことから、被害に遭った客が、ゴルフ場に対して場屋営業者としての責任を追及する訴訟が増えてきているという。そして、こうした裁判例の中には、まず貴重品ロッカーに携帯品を保管したことにつき、客と場屋営業者との間に寄託契約が成立するのか否かを検討し、その結果、寄託契約が成立しなくても、場屋営業者側に、貴重品ロッカー等の施設内の管理に不注意があった場合には、当該営業者に対し、商法594条2項に基づく善管注意義務違反を認めるものも出現してきている。本稿では、場屋営業者の責任に関する商法594条の規定の趣旨を確認した上で、当該規定に関する近時の裁判例を検討しつつ、場屋営業者には、例え客との間に寄託契約が成立しなくても、客が安心して携帯品を貴重品ロッカー等に預けられるようにするための施設に対する安全管理義務があると結論付けている。