著者
長谷川 紀幸
出版者
国立大学法人 横浜国立大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

2012年中教審答申では「生涯学び続け主体的に考える力を育成する」ために「学修時間の増加・確保する」ことが重要であると強調されている。一方、大学教員が、担当する授業科目を対象にした教育活動を記録する「コース・ポートフォリオ(以下CPf)」は授業実施のリフレクションを促し、授業改善に有効なツールである。(Cerbin W. 1994、酒井ら2012)CFfは授業デザイン、教授プロセスと共に学生の「書く・話す・発表する等の活動」も記録・蓄積することから、「書く・話す・発表する等」の学習活動を促進・深化するアクティブラーニング(以下AL)の支援に応用することも考えられる。本研究ではCPfが教員の授業改善だけでなく、ALへの援用によって「学修時間の増加・確保する」こともできることを明らかにすることを目的とする。本研究では、(1)当該補助金で出張した「大学教育学会」「金沢大・大学教育開発・支援センター」「東北大・大学教育支援センター」「大学プロフェッショナルセンター」での調査によりALおよびCPfの事例について情報収集を行った。(2)当該補助金で購入した物品を以下のように使用してCPf作成用の授業記録データの収集、映像取得・編集・蓄積し、教材を作成した。またUSBメモリ等に講義の音声・映像を記録し、「音声認識SW」により講義録を作成した。とれらの授業記録データから作成した簡易的なCPfを参照し、HDDに保存した高精細画質の講義録画データを「映像編集SW」等によりALに活用できる教材を作成した。(3)既存の学習支援システム上で作成した教材をAL型の授業に援用し、昨年度の比較によって効果を検証した。その結果、CPfから作成した教材を援用した授業では昨年、一昨年よりも学生の出席率および授業時間外学習の時間が向上した。これは学生の授業への参加の動機づけと学習意欲の向上に対し、CPfから作成した教材が授業内容を以前よりもより反映したものとなったことで影響を与えたためである。このようにCPfは教員の授業改善に有効であるだけでなく「学修時間の増加・確保する」(中教審)など学生の学習への動機づけと学習意欲の向上にも有効であることが言える。