- 著者
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福家 教子
- 出版者
- 国立療養所 大島青松園
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
【研究目的】要介護高齢者の摂取食形態を調べ,入所者の口腔内細菌叢,口腔水分量および咀嚼機能を摂取食形態別に比較することによって,きちんと形のある普通の食形態の食事をすることの重要性を明らかにする。【対象】ハンセン病療養所である大島青松園の入所者102名(平均年齢77.4歳)を対象者とした。【方法】1.摂取食形態を普通食,軟食および絶食(非経口栄養剤)に分類して,対象者の食形態を調べた。2.採血して血清アルブミン量を測定した。3.滅菌綿棒で口腔粘膜全体を擦過して検体を採取した。その検体を血液寒天培地,チョコレート寒天培地およびカンジダ培地で塗沫培養し,菌量および菌の同定を行った。4.口腔水分計を用いて口腔内の水分量を測定し,咀嚼力判定ガムを用いて咀嚼能力を調べた。【結果】1.入所者の摂取食形態は,普通食78名,軟食19名および絶食5名であり,普通食の摂取者が最も多かった。2.食形態が普通食から軟食,絶食になるに従って,栄養状態の指標となる血清アルブミン量が減少した。3.普通食摂取者および軟食摂取者の口腔内からは,口腔内常在菌であるαレンサ球菌およびナイセリアを多く検出した。非経口摂取者の口腔内からは、日和見感染症の原因菌である緑膿菌、セラチアおよびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌を多く検出した。また,普通食摂取者に比べて軟食摂取者の口腔内カンジダ菌の検出割合がやや多かった。4.食形態が普通食から軟食,絶食になるに従って,口腔水分量が減少し,咀嚼能力が低下する傾向があった。【考察】より普通の食形態に近い食事を提供することは,入所者に必要栄養量だけでなく「食べる楽しみ」を与え,QOLを向上させることにつながる。さらに,咀嚼による自浄作用や唾液分泌を促し,日和見感染症の原因となる細菌の増殖防止にもなる可能性が示された。