著者
内藤 敦之
出版者
大月短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は基本的な文献のサーベイを中心に研究を行った。第一に金融化論に関する文献の検討を行った。ポスト・ケインジアンによるものを中心に、金融化論において政策がどのような役割を果たし、どのような作用を及ぼしているかという点を検討した。第二に、マクロ経済レジーム論の検討を行った。ここでは、近年のボワイエなどによって展開されているレギュラシオン理論の金融主導型レジームと認知資本主義論のレジーム論を対象にサーベイを行い、政策がどのような機能を果たし、マクロ経済連関にどのような影響を与えているかを検討した。第三に、認知資本主義論の検討を行った。認知資本主義論はネグリ、ハートの影響の下、労働の変容とIT化が政治、社会に及ぼす影響だけでなく、経済に与える影響に関しても分析を行っている。ここでは、経済学的な分析におけるネオ・リベラリズム論への言及を中心にサーベイを行い、金融主導型レジームとネオ・リベラリズム政策の関係を考察した。第四にネオ・リベラリズム関係の文献の検討を行った。金融を重視した文献も含めてネオ・リベラリズムの概念を明らかにした上で、ネオ・リベラリズム政策の概要とその役割についてサーベイを行い、金融(化)との関係を中心に検討した。第五に、先駆的なネオ・リベラリズム研究であるフーコーの『生政治の誕生』を中心に、フーコーのネオ・リベラリズム観についての検討を行った。成果としては第一に、一般向けではあるが、「経済政策の哲学―ネオリベラリズムのフーコーによる分析―」(県民コミュニティーカレッジ、2017年10月25日、大月短期大学)という題で講演を行い、フーコーがネオ・リベラリズムをどのように捉えているかという点を検討した。第二に、ミンスキーにおける流動性選好説を検討した論文「ミンスキーと流動性選好」(『大月短大論集』第49号)を発表した