- 著者
-
片木 宗弘
- 出版者
- 大阪府警察本部
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
トリプタミン系化合物の合成法は、その原料の入手のし易さと、合成経路の簡便さから、概ね、1)該当するインドール類(インドールあるいはメトキシインドール)を出発原料とし、オキサリルクロリドによりグリオキシルクロリドとした後、適当なアミン(例えば5-Me0-DIPTではジイソプロピルアミン)と反応させ、生成したグリオキシルアミドをリチウムアルミニウムヒドリドにより還元する方法、2)該当するトリプタミン類(トリプタミンあるいはメトキシトリプタミン)を出発原料とし、適当なハロゲン化アルキル(例えば5-Me0-DIPTでは2-ヨウドプロパン)と反応させる方法の2つの経路が考えられる。合成経路の簡便さでは、2)の方法が1段階の反応であるため遥かに簡便ではあるが、反応副生成物としてアルキル基が1つ導入されたモノアルキルトリプタミン類が必ず生成し、塩酸塩として再結晶を試みたがモノアルキルトリプタミン類を除去することは出来ず、これを分離除去するためには、カラムクロマトあるいは減圧蒸留が不可欠であった。一方、1)の方法では、合成経路は3段階の反応が必要であり、反応生成物が着色しやすいなどの欠点はあるものの、目的物以外のアルキルトリプタミンはほとんど生成せず、塩酸塩として再結晶すればかなり純度の高い塩酸塩が得られた。なお、再結晶法は、温エタノールを用いて溶解後、冷エーテルを加える方法が効果的であった。更に、実際密売されているトリプタミン類は塩酸塩であるが、これらに含まれる不純物をGC-MSにより探索したところ、純度は非常に高く、特にモノアルキルトリプタミン類の混在は見られなかった。このことから、トリプタミン類の密造経路としては、2)よりもむしろ1)の方が可能性が高いと示唆される。なお、実際合成にかかる原料代の面でも1)の方が安価であり、コスト的にもより可能性が高いと考えられる。