著者
山本 剛
出版者
学校法人 福島成蹊学園 福島成蹊高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

本研究では, 生徒たちに電気伝導度を精密に測定させ, 電気伝導度の低下量とミカヅキモ(Closterium moniliferum)の細胞数との関係, 電気伝導度の低下量とストロンチウムイオン濃度の関係を明らかにする。この結果に基づき, 福島で起きた原発事故後の放射性物質の除染活動を, 生徒たちが採集し, 培養したミカヅキモを利用し, 実現できるかどうかデータ収集を試みる。また, 藻類の種類による電気伝導度の変化を調査し, より電気伝導度を低下させる藻類を発見する。実際の汚染水中には放射性セシウムのような他の金属イオンも存在するので, 他の金属イオンが共存する中でも選択的にストロンチウムイオンを吸収するかどうか, また, より効果的な吸収条件についてもデータ収集を実施する。研究方法は, メトラー社製の電気伝導度計を用いて, 一定量のミカヅキモが投入された塩化ストロンチウム水溶液の電気伝導度を投入後から15分間1分ごとに測定。塩化ストロンチウム水溶液の濃度と電気伝導度の関係を表す検量線よりストロンチウム濃度を求め, 低下前の値と比較し, ミカヅキモのストロンチウム吸収量を求めた。研究成果としては, 一定量の塩化ストロンチウム水溶液であれば, 細胞数が多いほど全体の吸収量が増えると予想していたが, 細胞数が多くても吸収量が少なく, 適正な細胞数があることが明らかとなった。また, 1細胞当たりの吸収量も同じ量になると予想していたが, かなりばらつきがあった。また, ミカヅキモの種類で比較するとClosterium moniliferumよりもClosterium lunulaの方が光学顕微鏡による顆粒の観察により, より多くのストロンチウムを吸収することができる可能性が高まった。採集したアミミドロ(HydrodictyunSp.)も電子顕微鏡観察により, ストロンチウムを吸収していることが明らかとなった。