著者
樋口 泉
出版者
山梨県立甲府工業高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

古来より竹は様々な形で構造材料として利用されてきた植物であり、丸竹をコンクリートの中に入れ竹筋コンクリートとして使われたこともあった。最近では比強度が大きく加工の容易さや高弾力性及び耐久性などに注目し集成材として床材や家具などに利用されてきている。しかしながらその利用量はわずかであり放置された竹林が目立っている。また、その機械的性質についても発表されているものは少ない。そため構造部材として使うための合理的な設計指針が明らかにされていない。そこで、本研究は、竹板材を被着体とした単純重ね合わせ接着継手に静的曲げモーメントを作用させ、継手に発生する応力と強度について有限要素法による計算及び実験の両面から調べ竹材有効活用の確立を目的とする。静的曲げモーメントを受ける被着体が竹板である単純重ね合わせ接着継手の応力に関して実験および有限要素法による計算で調べたところ以下の結果が得られた。(1)ひずみに関する実験結果と有限要素法による計算結果はかなりよく一致した。(2)継手に発生する応力を調べたところ接着剤層界面端部に応力の特異性が見られ、応力値が大きくなることが分かった。この位置での応力成分は繊維方向の引張応力と繊維方向に対して直角方向の引張応力が同程度の大きさで、かなり大きくなることが観察された。被着体の材料特性を考慮すると、この位置から繊維方向に対して直角方向への被着体の破壊も予測される。(3)被着体厚さ4mm、幅25mm、接着長さ25mmの単純重ね合わせ接着継手の曲げ強度実験より得られた継手の強度から、応力特異場の強さを求め、この結果を被着体厚さ4mm、幅25mm、接着長さ20mmおよび30mmの継手の強度に適用させて得た予測値と強度実験値を比較したところ、強度予測結果と実験結果はかなりよく一致した。静的曲げモーメントが作用する被着体が竹板である単純重ね合わせ接着継手の強度は、応力特異場の強さで予測できることを示した。