著者
山田 雄司
出版者
山田雄司
巻号頁・発行日
2007-03-01

北野天満宮に関する古文書・古記録は、現在では各所に分かれて所蔵されているため、その全貌をうかがい知ることは困難である。しかし、文書群全体を把握した上で利用する場合と、そうした把握なしに部分的に利用した場合では、おのずと理解に差が生じよう。また、文書がいかに伝来してきたかを把握しておくことも、文書の理解につながるはずである。本研究では、こうしたことを前提に、明治維新前にどのようなかたちで文書が伝来してきたのかできるかぎり復元することにつとめ、かつての所蔵ごとに分類しようと試みた。ただし、北野天満宮所蔵分および筑波大学附属図書館所蔵分については、いくつかの所蔵先から流入したと推測されるが、分割することはせず一括して目録を作成した。北野天満宮旧蔵文書の中で大部分を占めるのが、松梅院が有していた文書群である。松梅院旧蔵の古記録は、現在では北野天満宮・筑波大学附属図書館・天理大学附属天理図書館・早稲田大学図書館で所蔵されていることが確認できる。松梅院に関する文書・古記録は、維新後に還俗して正神主兼社務となった吉見氏が所持していたが、その一部は明治30年以前に北野神社に寄贈された。そして一部は吉見氏が北野神社から離れ、さらには種々の理由により史料を手放したことにより、市中に出回ったものと推測される。文書の多くは、もと安楽寺御供所に鎮座していた一之保社に伝来し、神仏分離により安楽寺が廃絶となり、明治6年7月に一之保社が北野天満宮境内へ遷座したことにともない、神宝類も天満宮に移管されることになって北野天満宮所蔵となったものが多い。著名な酒麹役に関する文書ももと一之保社で所持していた。その他、現在知ることのできる北野社旧蔵古記録・古文書の目録を作成し、あわせて、筑波大学所蔵の北野関係文書の翻刻を行った。