- 著者
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守屋 剛一郎
高野 研一
- 出版者
- 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
- 雑誌
- 修士論文
- 巻号頁・発行日
- 2011-03 (Released:2010-00-00)
通信と放送の融合が本格化する今日において、情報システム開発とコンテンツ制作の技術融合は、さらに促進されるものと思われる。ウェブサイトの開発・制作者がこの技術融合に順応し、互いのクリエイティビティを向上させ、ユーザに満足を与える、といった結果が望まれる。しかし、その一方で、ウェブサイト開発・制作の複雑化の影響もあり、(品質、予算、工期における)プロジェクトの失敗、長時間労働、離職・転職といった問題も生じている。これらの問題の多くは、ウェブサイト開発・制作に係る組織が、プロジェクトマネジメントや関連技術の進歩に組織的に対応できていない場合に起因するものと考える。プロジェクトマネジメント対策として、プロジェクトマネジメント知識体系や組織のプロセス改善成熟度モデルであるCMMI(Capability Maturity Model Integration)などすでに確立された有効的な取り組みが存在するが、本研究では、ウェブサイト開発・制作者のプロジェクトや組織に対する意識の把握を試み、プロジェクトマネジメントを実践し得るための組織の内部要因を探索した。方法として、ウェブサイト開発・制作者を対象とした、「人がやめる」ことと「プロジェクトの失敗」という問題に係る要因を確認する92問の設問によるアンケート調査を実施した。そして、アンケート調査結果の596有効回答に対して多変量統計分析を行った。抽出した因子を用いて共分散構造分析を行った結果、「人がやめる」、「プロジェクトの失敗」を表した尺度に負荷をかける因子と、負荷を軽減する因子の関係を確認した。負荷を軽減する因子は「経営・管理陣への信頼」、「技術・情報の共有」、「処遇への満足」であった。それらの分析結果を基に、ウェブサイト開発・制作に係る組織が、プロジェクトマネジメントや関連技術の進歩に組織的に対応するための提言を作成した。