著者
Monteagudo Canales Alberto
出版者
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.63-75, 2021

<p>日本のエンターテインメント文化において、「ソード・アート・オンライン」ほど、国内外から大きな注目を集めている物語世界はない。本考察では、同名のアニメの前半16話分に焦点を当て、文化的にも年代的にも異なるスペイン文学の最高峰『ドン・キホーテデ・ラ・マンチャ』と比較分析する。つまり、アニメの主人公である桐ヶ谷和人が、そのアバターであるキリトに、ときには歪んで、ときには忠実に反映される点で、アロンソ・キハノとその分身であるドン・キホーテの関係をベースに読み解く試みである。さらに、このアニメのキャラクターを分析することで、このアニメシリーズが、スペイン黄金時代のテクストにおいてすでに生み出されていた現実と外見の概念に対する考察を深化することも可能ではないか。このアニメは、スペイン黄金世紀とは異なる社会史的・時間的条件の産物であるにもかかわらず、幅広くバロック的感覚を備えており、日本の大衆文化に慣れ親しんだ観客が、17世紀スペインの文学的形象を再考・再発見する一助となるであろう。</p>
著者
Brazhnikova Tsybizova Violetta
出版者
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.29-43, 2020

<p>現在、喜劇<i>Los primeros mártires del Japón</i>(日本初の殉教者たち)はアントニオ・ミラ・デ・アメスクアの作品であるとの説が有力であるが、長らくその著者はロペ・デ・ベガであるとされてきた。この演劇作品はキリスト教伝道とキリスト教の東洋化を描き、西洋と東洋の2つの文化の橋渡しとしての役割を負わせたものとなっている。また、当該作品では、女性を受け身の役を与えていない点が注目される。カルデロン・デ・ラ・バルカの『人生は夢』のロサウラやティルソ・デ・モリーナのAmazonas en las Indiasをはじめとしたスペイン黄金期の演劇作品に登場する男装の女性との類似性が見られるのである。つまり、女性の戦士という役柄は、当時の女性の規範に対抗する形で登場しており、その意味で、この作品の分析は17世紀における女性解放を分析する上での出発点になり得る。</p>