著者
Monteagudo Canales Alberto
出版者
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.63-75, 2021

<p>日本のエンターテインメント文化において、「ソード・アート・オンライン」ほど、国内外から大きな注目を集めている物語世界はない。本考察では、同名のアニメの前半16話分に焦点を当て、文化的にも年代的にも異なるスペイン文学の最高峰『ドン・キホーテデ・ラ・マンチャ』と比較分析する。つまり、アニメの主人公である桐ヶ谷和人が、そのアバターであるキリトに、ときには歪んで、ときには忠実に反映される点で、アロンソ・キハノとその分身であるドン・キホーテの関係をベースに読み解く試みである。さらに、このアニメのキャラクターを分析することで、このアニメシリーズが、スペイン黄金時代のテクストにおいてすでに生み出されていた現実と外見の概念に対する考察を深化することも可能ではないか。このアニメは、スペイン黄金世紀とは異なる社会史的・時間的条件の産物であるにもかかわらず、幅広くバロック的感覚を備えており、日本の大衆文化に慣れ親しんだ観客が、17世紀スペインの文学的形象を再考・再発見する一助となるであろう。</p>
著者
Alberto Millán Martín
出版者
Confederación Académica Nipona, Española y Latinoamericana
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.13-35, 2019 (Released:2020-11-14)
参考文献数
27

本稿では、1882年の夏より1年強日本に駐在したスペイン外交官フランシスコ・デ・レイノソ著の長編旅行記En la Corte del Mikado. Bocetos japoneses (Madrid, 1904)における外行語(日本語からの借用語)の言語学的特徴を分析した。まず、他の西欧語に定着した日本語単語のスペルをなるべく踏襲しながら、スペイン語の正書法に従って日本語の音声転写を試みた著者独特の表記方法の大きな特徴を見出し、明らかにした。次に、西文における和語の用法に見られる主な形態統語的性質の概要をまとめた。具体的には、ハイフンの使い方に反映されたと思われる語彙の形態素構造の理解、および名詞の性と数の扱いに焦点を当てた。最終的には、レイノソにおける日本語借用語の取り扱い方は、不規則や例外を一部含みながら、単なるローマ字表記の方法とスペイン語への語彙化の同化プロセスの両方の中間領域に位置することが確認できた。
著者
Brazhnikova Tsybizova Violetta
出版者
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.29-43, 2020

<p>現在、喜劇<i>Los primeros mártires del Japón</i>(日本初の殉教者たち)はアントニオ・ミラ・デ・アメスクアの作品であるとの説が有力であるが、長らくその著者はロペ・デ・ベガであるとされてきた。この演劇作品はキリスト教伝道とキリスト教の東洋化を描き、西洋と東洋の2つの文化の橋渡しとしての役割を負わせたものとなっている。また、当該作品では、女性を受け身の役を与えていない点が注目される。カルデロン・デ・ラ・バルカの『人生は夢』のロサウラやティルソ・デ・モリーナのAmazonas en las Indiasをはじめとしたスペイン黄金期の演劇作品に登場する男装の女性との類似性が見られるのである。つまり、女性の戦士という役柄は、当時の女性の規範に対抗する形で登場しており、その意味で、この作品の分析は17世紀における女性解放を分析する上での出発点になり得る。</p>
著者
Paula Martínez Sirés
出版者
Confederación Académica Nipona, Española y Latinoamericana
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.31-45, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
37

本稿は、1890年代のいわゆる「女流文学」で代表的な作家の一人である清水紫琴(1869-1933)を紹介することを目的とする。活動家、エッセイスト、作家であった紫琴は、作品を通じて女性の権利を主張した。明治の文壇に言文一致が導入され始めた頃、女性作家に対する表現の制限を打破するため、紫琴は直接的かつ自然なスタイルで「こわれ指環」(1891)を執筆する。本稿では、『こわれ指輪』の初スペイン語翻訳を通じて、清水紫琴の信念やフェミニズム的な切り口を検証する。
著者
Santiago Sevilla-Vallejo
出版者
Confederación Académica Nipona, Española y Latinoamericana
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.77-93, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
34

Crónica del rey pasmadoは、フェリペ4世が妻の裸を見るために突き当たった様々な障害を描いたものである。当時、教会や政府関係者は、国王が妻の裸をみるという行いによって、新大陸から戻る艦隊の損失と、フランドルでの軍事的敗北につながることを恐れられていた。この小説では、性的タブーを犯さない限り、神がトーテムのように自分たちを守ってくれるという原始的な考え方に支配された宮廷に出入りする面々を描き出している。つまり、ゴンサロ・トレンテは、スペインの不合理な文化的論理を面白おかしく批判するために、歴史的枠組を使ったのである。本論文ではCrónica del rey pasmadonにおけるパロディーを踏まえた心理臨床的なアプローチを実践し、タブー神話の崩壊、そしてアイロニーとの関係を考察する。
著者
Juan Mendoza Pinto Angelo Castro González
出版者
Confederación Académica Nipona, Española y Latinoamericana
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.47-61, 2021 (Released:2021-06-25)
参考文献数
36
被引用文献数
2

本考察は、16世紀から17世紀にかけてのマプチェ文化における銃器の影響、使用、大量生産化について、「ヴァイチャフ」と呼ばれるエリート戦士に焦点を当てて分析したものである。このエリート集団は武器の扱いに優れており、ヨーロッパで考案された火薬兵器に象徴される近代性と正面から闘った。こうした戦いは、ヨーロッパの戦争方法が世界的に拡大・採用された軍事革命の中で起こったものである。従って、今回は文献分析にもとづき、軍事史の観点から考察を行っている。
著者
Alberto Millán Martín
出版者
Confederación Académica Nipona, Española y Latinoamericana
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.78-99, 2018 (Released:2020-03-09)
参考文献数
45
被引用文献数
1

Aunque el número de japonesismos utilizados en la lengua española es cada vez mayor, no existen estudios cualitativos que hayan analizado si la transferencia de conceptos desde la cultura japonesa a la nuestra se ha realizado desde una práctica rigurosa que nos permita comprender bien la idiosincrasia de esa civilización. Este trabajo explora los principales problemas detectados en la lexicalización de términos culturales japoneses, especialmente los errores de carácter semántico, tomando como caso de estudio el diccionario de cultura japonesa Sakura de la editorial Satori (2016), obra académica especializada única en español, elaborada con la participación de numerosos especialistas. Basándonos en nuestra triple perspectiva de las teorías del cambio lingüístico, los estudios de traducción y la comunicación intercultural, proponemos una tipología de errores analizables mediante categorías no excluyentes entre sí, con el fin de facilitar una muestra orientativa encaminada a la detección y prevención de errores similares en futuros trabajos.
著者
Valeria Fiszelew
出版者
Confederación Académica Nipona, Española y Latinoamericana
雑誌
日本・スペイン・ラテンアメリカ学会誌 (ISSN:13449109)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.75-95, 2020 (Released:2020-11-14)
参考文献数
46

本論文では、中世前期(5~8世紀)のローマカトリック教会の典礼の枠組において、聖書をはじめとする書字がネウマ譜の形成に果たした役割を分析する。カトリックの典礼において朗読することで聖書を理解させるためには、読み手を助けるために、一連の符号システムを開発が必要となった。このシステムはテクストの文法構造と朗読の抑揚を同時に示すことで、ネウマ譜の前身となった。本稿では、ネウマ譜の起源に関する先行研究を検討し、ネウマ譜いかなる歴史的経緯を経て成立したかを示す。