著者
角田 賢次
出版者
日本学生支援機構
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

○研究目的 我が国経済・社会の環境変化は、大学経営管理手法の抜本的な改革を余儀なくさせ、これまで大学経営管理の意思決定の関与度合いが低く、意思決定に必要な資質や能力が十分に担保されていなかった大学事務職員に対し、大学改革の推進力としての期待が高まっている。一方、米国の高等教育が、規模や教育・研究水準の面で圧倒的な影響力を有する現状を踏まえれば、我が国の大学は、今後も米国の大学改革の影響を受けていくと考えられる。特にAdministrative Staff(以下「AS」)の現状を見ると、組織的変革の必要性に気付かされる。こうした背景を踏まえ、我が国の大学事務職員(以下「職員」)が、大学経営管理に関していかなる役割を果たし意思決定に関わっていくべきかという観点からASの特質を考察することで、大学経営管理上の問題点を明らかにしつつ職員の職能開発のあり方を考察する。○研究方法 (1)職員に関連する研究蓄積について関連文献及びWebsiteから情報収集を行い、調査・確認事項をまとめてあらかじめ訪問調査先に情報提供した。(2)Finance and Administrative Services,Human Resources,University of California,Berkeley、及びEmployment,Staff Human Resources Service Teams and Operations,Policy and Projects,University of California,Santa Cruzを訪問し、ASの職位・肩書き、待遇、雇用形態、職務内容、職能開発等の現状について調査した。(3)不足する情報等を訪問調査先に確認した。○研究成果公立大学では各州の自治権が強く、私立大学では経営母体の独自性が強いため、米国内ですら一貫したASの現状を把握することは困難であり、ある程度の専門性が認められるASについては、独自の職務名称を用いて非専門職員との区別を図っているため、我が国の職員と厳密な同義語を見つけることは困難である。事務組織の構成も千差万別である。したがって、我が国の国立大学法人の事務局配属職員と米国州立大学のHuman Resources配属ASのような比較対象軸を限定することで考察結果を明確にできる。勿論、専門化が進むASの現状を的確に把握することは継続した研究課題となる。ASは、長期雇用を前提として採用されることは希で、The Chronicle of Higher EducationのAdministrative Positionsの求人では、職務分野毎に毎号数百件のポストの募集が行われているが、将来的にASと我が国の職員との交流の展開が期待される。