著者
花 大洵 新谷 祐貴 竹信 敦充 寺岡 暉
出版者
日本脳神経外科漢方医学会
雑誌
脳神経外科と漢方 (ISSN:21895562)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.47-52, 2016-09-30 (Released:2023-07-31)
参考文献数
24

我々は補中益気湯による意識障害の改善作用を検討した。方法:Glasgow Coma Scale 8点以下が1週間以上続いた入院患者7例に対し補中益気湯を連日投与し種々の評価尺度で意識の改善を評価,統計学的解析を行った。結果:全例で補中益気湯開始後に著明な意識改善を認め,特に投与1週間以内で効果を認める症例が多かった(71~86%)。また,亜急性期~慢性期に投与を開始した症例の方が,急性期に投与を開始した症例より最終的な意識改善度が高い傾向があったが,統計学的な有意差はなかった。本研究は,渉猟し得た限り補中益気湯の意識改善作用を示唆した最初の報告である。
著者
北原 正和
出版者
日本脳神経外科漢方医学会
雑誌
脳神経外科と漢方 (ISSN:21895562)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.17-25, 2017-09-15 (Released:2023-06-30)
参考文献数
47

2007年8月から2016年12月までに146例の慢性硬膜下血腫(CSDH)に対して柴苓湯治療を行い,その治療効果を検討した。内訳は男性97例,女性49例,年齢32~99歳で32.9%が85歳以上であった。症候性が92例で,意識障害や重度の運動麻痺24例,歩行障害19例,認知症12例,頭痛・嘔気・嘔吐14例,頭痛のみが21例などである。これらに対して柴苓湯6 g/日を投与し,134例(91.8%)で血腫の縮小あるいは消失を認め,高い有効性が得られた。投与期間は2~14週,平均5.7週で,投与後平均2.2週でCT所見の改善を認めた。なお高度の圧排所見を認めた9例では当初デキサメタゾン注射薬を7~10日間併用した。症候性では91.3%,無症候性では92.6%で有効であり,同等の治療効果であった。77例で抗血栓を内服していたが全例継続した。抗血栓薬の有無でも有効性に差は認めなかった。副作用は間質性肺炎,肝機能障害,低K血症,下痢が1例ずつであったが,投与中止後早期に回復した。柴苓湯はCSDHに対する治療薬として有用である。当科では柴苓湯の副作用を考慮して,1日6 g・分2の用量であくまでも治療として用いること,できる限り短期間の投与とするよう心掛けている。また慢性呼吸不全や肝障害の基礎疾患がある場合には他の治療を優先するよう留意している。