著者
福村 直毅 山本 ひとみ 北原 正和 鎌倉 嘉一郎 植木 昭彦 牛山 雅夫
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.303-314, 2017-04-18 (Released:2017-06-16)
参考文献数
34
被引用文献数
5 3

【目的】機能的自立度評価表(FIM)による分類が重症(FIM総得点≦40点)患者の日常生活動作(ADL)や栄養・免疫状態低下に対する補中益気湯の有効性および安全性について検討した.【方法】片麻痺を伴う脳血管障害後遺症でリハビリテーション施行患者31例を対象に補中益気湯(TJ-41)投与群と非投与群に無作為に割付し,24週間観察した.評価はADL,炎症性合併症発症率などである.【結果】FIM総得点は両群ともに治療前後で有意に改善したが,FIM利得に群間差はなかった.炎症性合併症発症率はTJ-41投与群で有意に低かった(p=0.049).FIM運動得点が20点以下の症例において,治療前後の総リンパ球数変化比はTJ-41投与群で増加傾向が認められた.本研究において副作用はなかった.【結論】補中益気湯は脳血管疾患などのリハビリテーションにおいて炎症性合併症対策に有用である可能性が示唆された.
著者
北原 正和
出版者
日本脳神経外科漢方医学会
雑誌
脳神経外科と漢方 (ISSN:21895562)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.17-25, 2017-09-15 (Released:2023-06-30)
参考文献数
47

2007年8月から2016年12月までに146例の慢性硬膜下血腫(CSDH)に対して柴苓湯治療を行い,その治療効果を検討した。内訳は男性97例,女性49例,年齢32~99歳で32.9%が85歳以上であった。症候性が92例で,意識障害や重度の運動麻痺24例,歩行障害19例,認知症12例,頭痛・嘔気・嘔吐14例,頭痛のみが21例などである。これらに対して柴苓湯6 g/日を投与し,134例(91.8%)で血腫の縮小あるいは消失を認め,高い有効性が得られた。投与期間は2~14週,平均5.7週で,投与後平均2.2週でCT所見の改善を認めた。なお高度の圧排所見を認めた9例では当初デキサメタゾン注射薬を7~10日間併用した。症候性では91.3%,無症候性では92.6%で有効であり,同等の治療効果であった。77例で抗血栓を内服していたが全例継続した。抗血栓薬の有無でも有効性に差は認めなかった。副作用は間質性肺炎,肝機能障害,低K血症,下痢が1例ずつであったが,投与中止後早期に回復した。柴苓湯はCSDHに対する治療薬として有用である。当科では柴苓湯の副作用を考慮して,1日6 g・分2の用量であくまでも治療として用いること,できる限り短期間の投与とするよう心掛けている。また慢性呼吸不全や肝障害の基礎疾患がある場合には他の治療を優先するよう留意している。