- 著者
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斉藤 宏
- 出版者
- 東京都立新宿山吹高等学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
研究目的サンゴは栄養分の多くを共生している褐虫藻から供給されることから、褐虫藻の状態を可視化できれば、サンゴの健康状態をモニタリングできると考えた,陸域植生ではクロロフィルが赤色域の光を吸収し、近赤外域の光を反射する性質を用いて、正規化植生指標で解析しモニタリングができる。しかし、水中では、長波長の光は吸収のため遠距離からの観測は困難である。そこで、水中で近距離からの反射を捉える方法として、水中での青色域の減衰が赤色域より少ないこと、光合成は青色域も利用されている性質を活用して開発を行った。市販のデジタルカメラを活用することで安価なコストでモニタリングできるうえ、白化にいたる段階を数値化できるため、いままでの目視による主観的なモニタリングに対して客観的データを収集することができる。このシステムを用い、サンゴの期間経過での変化と、目視では確認できない変化が起こっているかを調べた。研究方法市販のナイトショット機能(近赤外域の感度が高い機能)を持つデジタルカメラに青と近赤外光を切り分けるフイルターをつけてそれぞれ撮影し、2つのサンゴの画像から画素演算したNDCI画像(画像用サンゴ用正規化植生指標)から、サンゴの健康度をシュードカラー表示で可視化すると共に、一定の範囲のNDCI画素のデジタル値の平均値を比較することで健康度の推移を調べた。研究成果この手法により、7月、8月、10月、1月と石垣島白保リーフにおいて観測を続けた結果、白化と通常の状態の間で目視では確認できない段階を可視化し、期間変化を数値化し、高温ストレスや低温ストレスの影響を明らかにすることができた。また、10月のときは台風通過の翌日の観測になったが、キクメイシの画像解析では、流れ上流側の健康度が低く、流れと反対側は高いことが分かり、1月にもう一度同じキクメイシを測定したところ、通常の状態のように、全体に健康度の高い部分が広がっていた。このことから、上流側に砂や泥が流れてきてその泥ストレスによる健康度変化と思われるデータも収集でき、大きな成果をあげた。