- 著者
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丹羽 孝良
- 出版者
- 桐生市立清流中学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2012
研究の目的は、水の電気分解の電源として植物の光合成を利用した中学生向けの実験教材を開発することである。植物生体電位測定装置(μAを計測できるデジタルマルチメーターと電極粘着パッドまたは亜鉛板を電極として植物体内の電流値を計測できる装置)を使って、植物の生体電位(電流)の変化を観察した。この観察対象植物として、葉がしっかりしていて、かつ繁殖が容易なコダカラペンケイソウを選定し大量培養を7月から試みたが、10月をまわっても十分な成長が見られず、断念した。そこで、肉厚で亜鉛板電極が差し込みやすいサボテンを使って、厚さ1mm、幅1cmの亜鉛板の先1cmをサボテンの手前側と奥側の2カ所に差し込み、植物体内からの電流値を測定した。日陰での電流値は、亜鉛板を差し込んだ直後が最大(およそ60μA)で、時間の経過とともに減少したので、落ち着いたときの電流値を測定した(およそ40μA)。このサボテンを太陽光にあてると、若干の電流値の増加が見られた(+10%程度)。光合成との因果関係は不明だが、水の電気分解に必要な電流値(0.1A)は、2500鉢のサボテンを直列につなぐことで可能になるはずである。一方、白色LEDを光源にすると、若干の電流の現象が見られた(-10%程度)。LEDに代わる照明として植物生育用の蛍光灯の利用を考えたが、大量のサボテンに対する蛍光灯の数を考えると、電気分解に必要な電流を取り出す以上に電流を消費してしまうことになるので、光源としては、太陽光が最善であることがわかった。サボテンと亜鉛板の組み合わせで40μAをデジタルマルチメーターで計測する教材を試作した。結果として、サボテン単体から電流を取り出すことには成功したが、複数個のサボテンを直列につないで、電気分解に必要な0.1Aを取り出すことはできなかった。+極、一極の電気極性をそろえられないことが原因だと考えられるが、実証に至っていない。