著者
岩原 昭彦
出版者
樟蔭東女子短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

電子メール上での相談や議論は、送信者の意図がうまく伝達されにくいために、受信者に誤解を与え、結果的にケンカ別れに終わるなど禍根を残しやすいことが報告されている。誤解が生じやすいのは、対面式のコミュニケーション事態では、表情や韻律という非言語的情報が発話内容と同時に伝達され、送信者が抱く感情的意味情報は、表情や韻律を通して相手に伝達されるために、円滑なコミュニケーションが可能となる一方で、電子メールなどの文字言語に依存したコミュニケーション事態では、単語や文法による意味情報しか伝達されず、感情的意味情報がうまく伝達されないことに原因の一端があると考えられる。本研究は、通信内容と通信媒体で使われるべき活字体の相互作用の特徴を明らかにすることで、感情を内包した文字言語コミュニケーションのあり方について検討し、携帯メールや電子メールなどの文字情報に依存したコミュニケーション事態で、誤解を低減させる情報の表示形態のあり方についての基礎資料を提示することを目的としていた。研究の成果は以下の3点に集約される。(1)表記形態や書体を選択的に使用することで、文字言語コミュニケーション事態においても感情的意味情報を伝達することは可能である。(2)文字言語コミュニケーション事態で生じる誤解には一定のパターンが存在する。(3)情報の送信者は、表記形態を工夫することで送信者の感情的意味情報を伝達することが可能であり、誤解を低減することができると考えている。これらの成果をもとに,文字言語における感情的意味情報の伝達メカニズムの解明とそのモデルが構築された。文字言語においてどのように感情的意味を認識しているのかについて理解を深めるとともに、どうすれば文字言語において正確なニュアンスを伝達することが可能かを示唆している。