著者
西村 充司
出版者
海南市立大野小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

日本の伝統,また和歌山の文化に関わる"和"体験カリキュラムとして,主として次の4つの教材を中心に取り組んだ。一つめは,国文科から百人一首に関わるカリキュラムで,百人一首のカルタを4セット準備し,競技カルタの漫画を導入に,小学校3・4・5・6年生で2~3時間ずつカルタ取りを行うことで,興味・関心を高められるよう試みた。発達段階に則し,3・4年生は厳選10首程度から,高学年でも15首以下から始めることで,抵抗感なく親しめた。二つめは,伝統音楽からは和太鼓に関わるカリキュラムで,まずは県内のプロ太鼓演奏者を招聘して全校児童向けにコンサートを開催した。通常の和太鼓に加え,締太鼓・担ぎ太鼓も演奏していただいたことで,未知の日本文化を体感できた。特に印象的な感想が,演奏者の腕や上半身の筋肉に関する内容で,演奏者の真剣さや日頃の鍛錬にまで気づくことができた。その後は高学年児童が締太鼓・和太鼓を実際に演奏にした。鑑賞があったからこそ簡単に見えて難しい和太鼓の世界を体験できた。次年度は三味線にも親しみたい。三つめは,茶道体験活動で,2年生児童が,おひな祭り茶会として抹茶の入れ方や出し方,いただき方,また畳の上の歩き方など,特に作法やマナーに留意できるよう指導していただいた。常に相手のことを優先して振る舞う「おもてなしの心」の大切さと,それが日本の伝統的な文化様式の根底に流れていることを身をもって学ぶことができた。四つめは1年生児童を対象とした和菓子作り体験で,味わいのみならず色合いや見た目の優しさ,温かさ,季節感などにもこだわる繊細な心と技のすばらしさを体験できた。そして,百人一首以外は,希望する保護者も巻き込んで展開できた。日本の伝統文化の奥深さ・繊細さ・温かさ等,子どもと共に体感できた喜びをたくさん聴くことができた。