- 著者
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田中 福人
- 出版者
- 清心女子高等学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2010
○研究目的生物がもつ概日時計は多くの場合約24時間周期であり、光や温度などの環境サイクルへ同調することで正確に24時間の周期を保っている。動物の場合、光波長も概日時計を調節する能力を決める重要な因子であるとして研究が進んでいるが、植物では研究があまり進んでいない。よって本研究では、カタバミ科が概日時計の制御の下で行う就眠運動に対し、特に影響を与える光波長を明らかにすることを研究目的とした。○研究方法まず、温度を20度で一定にしたインキュベータ内に野外から採取したムラサキカタバミとイモカタバミを静量した。その後、赤・青・緑の波長の異なる3色のLED蛍光灯を用いてそれぞれ光を照射し、就眠運動の様子を観察した。用いたLED蛍光灯の波長は、赤色光が615~635nm、青色光が464~475nm、緑色光が520~535nmであり、与える光周期は(1)明期:暗期=12:12、(2)明期:暗期=3:3、(3)明期:暗期=1.5:1.5の3パターンとした。観察には赤外線Webカメラを用い、カメラを通じてパソコン上に写した画像を常時記録した。撮影終了後、10分おきに葉の開閉状況を調べ、各時間帯に葉が開いている割合を百分率で表し、光周期と合わせてグラフを作成した。○研究成果ムラサキカタバミとイモカタバミの両方において、(1)~(3)のいずれの光周期の場合であっても、光周期に同調して就眠運動を行う様子が観察できたが、暗期に光照射してから就眠運動が行われるまでの時間を各光波長で比較したところ、青色光が照射後約40分、緑色光が約50分、赤色光が約90分後であった。就眠運動は葉枕細胞内の容積変化によって引き起こされると考えられているので、この容積変化については青色光の効果が最も大きく、赤色光の効果が最も小さいことが明らかになった。