- 著者
-
小川 賢治
- 出版者
- 滋賀文化短期大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1993
この研究において以下の点が明らかにされた。1.叙勲授与は天皇の神聖な意思によるものであり、その証明書である勲記は天皇の権威と切り離せない。それは、勲記における天皇自身の署名、「天祐ヲ保有シ万世一系ノ帝祚ヲ践タル」という修飾語の使用などに現れている。しかし他面、国家そのものが勲章の権威の源泉でもあり、こう解釈する場合には天皇の存在は不要となる。2.勲章制度の本質とも言える差別性は、勲記の様式にも現れている。上位の勲章の勲記には天皇の署名と璽があるのに対し、下位の勲記からはそれは省略されている。また、勲章授与の方式も、天皇親授・太政大臣伝達・賞勲事務局長官伝達、に区別され、参列者・式次第などに明確な格差が設けられている。3.明治時代を例に取れば、叙勲の一般的傾向としては、ア.多くが軍人に与えられている。イ.残りもほとんど官吏であり、民間人の叙勲者は極めて少ない。ウ.金鵄勲章受章の条件とされる「武功抜群」とは、現実には「戦死」を意味する場合が多い。4.軍人の叙勲を見れば、勲等は、爵位の有無・種類、階級の高低、軍における地位の上下、また、金鵄勲章の等級、などに、対応している。5.勲章の授与権者である天皇は、自らに仕える皇室関係者に手厚く勲章を与える。その対象は、皇太子等の教育掛に始まり、侍医、侍従、女官、天皇紀編纂者、宮殿設計者などに亙る。