著者
浦川 聖太郎
出版者
特定非営利活動法人日本スペースガード協会(スペースガード研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、口径8.2mのすばる望遠鏡に導入された新広視野カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)を用いて、地球接近小惑星・ハンガリア領域小惑星・メインベルト小惑星のサイズ分布を求め、小惑星が受けた軌道進化や衝突機構を観測的に明らかにすることを目的としている。また、E-beltモデルに対する観測的な制約を与え、後期重爆撃期における小惑星サイズ分布の解明に迫る。平成29年度までにデータ解析環境の整備、HSC-pipelineを用いた画像解析を行なった。また、取得画像から小惑星を自動的に検出し位置測定と測光を行うするプログラムの開発を行なった。HSCは104枚のCCDチップからなるため、扱うデータ容量が膨大となり、プログラム実行にも時間がかかる問題がある。これを解決するために、プログラムの一部をCythonで記載することで効率化を行なった。一方で、ノイズを誤検出することや写りの淡い小惑星を自動検出できない問題点があった。平成30年度は、これらの問題を解決するために検出方法を一から見直し、取得画像数枚からマスク画像を作り、そのマスク画像を用いて恒星を取り除く処理の検討を行なった。この画像処理には、本研究課題と並行して行なっている木曽観測所Tomo-e Gozenカメラを用いた地球接近天体検出で得た知見が役になった。さらに、自動検出で見逃したものの人間の目には認識できるような非常に淡い小惑星を確認するためにGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を独自に開発することに取り組んだ。