著者
安彦 兼次
出版者
独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造事業本部
雑誌
源流 (ISSN:13453610)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.3, pp.46-50, 2001 (Released:2001-03-30)
参考文献数
15

人類文明の進歩は金属という物質の発展により大きく支えられてきた。その発展は量産化と特性改善の歴史であった。18世紀にヨーロッパに起こった産業革命を支えたのも、20世紀文明の飛躍的な進歩を支えたのも金属であった。21世紀にも、金属はやはり文明を支える重要な物質であることは間違いない。革新的な特性を有する金属はどうすれば発見できるのだろうか。今日、満ち溢れるほどの金属を生産し、保有する我が国では、金属の重要性はおろか、より優れた特性の金属を創ろうとする関心が薄らえてきたようだ。幸い、プロジェクト「超高純度ベースメタルの科学」の成果によって生まれたナノメタラジーの概念を遂行することは、新しい金属(合金も含む)を発見する早道の一つであることが分かってきた。ここでは「超高純度ベースメタルの科学」の成果の一部を紹介することにする。
著者
小川 哲生
出版者
独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造事業本部
雑誌
源流 (ISSN:13453610)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.2, pp.16-19, 2000

結晶の光励起による協力的構造相転移の簡単なモデルとして、局在電子-格子系の解析を行った。特に1 つの単位胞を光励起した場合に誘起される構造相転移について考察し、断熱極限と透熱極限の双方で、短距離力で適当な強度を持つ相互作用の場合に、大域的な構造相転移を引き起こすことがわかった。そのダイナミクスは「ドミノ倒し」であり、断熱極限では「決定論的ドミノ倒し」、透熱極限では「確率論的ドミノ倒し」と称される質的に異なる過程から成る。

1 0 0 0 OA 金属花

著者
蔡 安邦
出版者
独立行政法人 科学技術振興機構 戦略的創造事業本部
雑誌
源流 (ISSN:13453610)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.3, pp.34-45, 2001 (Released:2001-03-30)
参考文献数
9

準結晶とは、5回回転対称性をもつ物質である。5回回転対称性の物質は、結晶にはなりえない。なぜなら、結晶の定義は、結晶を構成する最小単位“単位胞”が厳密に配列している。つまり、単位胞の形をしたタイルで床を隙間なく覆い尽くせるのであるから。このような特異の構造を持つ準結晶の存在はもはや異例ではなく、多くの合金で確認されている。結晶を作製するあらゆる方法で、準結晶を作ることができる。また、結晶で測定できる物性も、準結晶でも殆どできるようになっている。本講では、準結晶の構造について簡単に説明し、準結晶構造に由来する性質を概説し、これに踏まえて最近の研究成果を紹介する。