- 著者
-
厨 源平
- 出版者
- 独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2010
IL-17を産生するTh17細胞は新しいヘルパーT細胞サブセットであり、関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患モデルでは、これまで、その病態の主役はTh1細胞と考えられてきたが、現在、Th17の重要性が報告されている。1型糖尿病においても、病態の中心はTh1細胞であると考えられてきたが、発症前(10週齢)のNODマウスに対し、抗IL-17抗体の投与により糖尿病発症抑制効果が報告され、自己免疫性糖尿病の病態へのTh17/IL-17の関与が示唆されている。そこで我々は、1型糖尿病の病態へのTh17細胞/Th1細胞の関与を検討した。IL-17欠損NODマウス(IL-17-/-NOD)、IL-17/IFNγRダブル欠損NODマウス(IL-17-/-/IFNγR-/-NOD)を作成し、野生型(wt-NOD)との、膵島炎レベル、累積糖尿病発症率を検討した。IL-17-/-NODとwt-NODのCD4+エフェクター細胞のNOD-SCIDマウスへ養子移入実験を行った。50週齢までの累積糖尿病発症率は、IL-17-/-/IFNγR-/-NODで50%であり、IL-17-/-NOD;80%、wt-NODマウス;86%との3群間で有意差を認めた(p<0.05)。若年のIL-17-/-NODマウス由来のエフェクター細胞の養子移入において明らかな発症抑制を認めた。Th17/Th1細胞は協調して糖尿病進展に関与しており、Th17の若年期の重要性が示唆された。