著者
阿部 努
出版者
独立行政法人国立高等専門学校機構函館工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

研究目的:初めてバイトを旋盤の刃物台にハンドルで締付ける作業を行う時、学生は締付けの力加減が分からないため、近年締付けの弱い学生が多く見受けられるようになった。極端な場合は加工中に外れる可能性があるくらい締付けが弱く、外れたバイトや破損時の破片が飛ぶ等の危険性がある。締付けが弱い事の理由としては、(1)力加減の程度を説明しづらい("思い切り"や"ほどほどに"など抽象的な表現では伝わりにくく、特に学生は理解しづらい)。(2)締めたもののその力加減で良いか分からない。そのため締付けの力加減が理解しづらくなっている。本研究はバイト設置における緩み・外れの危険を防ぐために、締付け時のハンドルのトルク、締付け荷重を数値化し、抽象的な説明では伝わりにくい経験者の力加減を教示するシステムを開発する事により、教育実習を改善する事を目的とした。研究方法:刃物台にロードセルを設置し、締付けトルク計測用ハンドル(追加工品)でバイトの取付け状況を数値化し、確認できるようにした。経験者による適切な荷重とその時のトルクを計測し表示・体験できるシステムを開発した。経験的な力加減でのトルクと荷重を指標とし、未経験者に指標と同じ締付け状況となるようにバイトの締付けを行ってもらった。指標となる経験者の力加減を事前に体験し定量的に確認した後実際の取付けに臨む事により、適度な締付けを理解しやすくした。研究成果:経験者の力加減を表示・体験できるシステムにより、視覚的及び定量的に体験できるようになり、言葉による説明と比較してより理解しやすくなった。明確な基準が存在しそれに向けて力を加えることは「このくらいでよいのか?」という不安を軽減し、安心して実際の作業に臨むことが可能となった。現在まで加工中の緩みや破損は起こっておらず、本システムにより力加減を意識するようになり、学生への教育効果という点において大きな成果を得た。