- 著者
-
木下 礼子
- 出版者
- 神奈川県立住吉高等学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2007
横浜市郊外に立地する公立A高校を2006年3月に卒業した201人を対象に、卒業後1年たって、どのような状況になっているか郵送によるアンケート調査を行った。3年前に行った同様の調査に比べ、求人数が増加していたにもかかわらず、就職者の約半数は1年以内に退職していた。また短大・専門学校でも退学者が見られ、前回調査では皆無だった大学進学者の中にも退学者があった。退職・退学した卒業生のほとんどがアルバイトなどの非正規雇用に就いていた。また卒業直後から非正規雇用に就いた者は、1年後も非正規雇用を続けている確率が高い。非正規雇用の就労場所は自宅周辺を指向する。その理由として(1)交通費が支給されないため交通費のかからない自転車・小型バイクなどで通勤できる範囲でジョブサーチを行っていること、(2)シフト制のため就業時間が不規則で、出勤・退勤時刻が早期・深夜になること、特に収入を増加させようとすると時給の高い早朝・深夜勤務にならざるをえないこと(3)非熟練労働で通勤時間をかけてまでとは思っていないことなどがインタビュー調査の結果から明らかになった。大都市郊外の低学歴若年層では、ジョブサーチの範囲が大卒者に比べて狭く、中心地指向は見られない。しかし将来を見越したキャリアプランは乏しく、これからずっと続けるかは「わからない」が、職場の人間関係が居心地がよく、「まあまあ」の時給の現在の職を「とりあえず」やっている。派遣についてはアルバイトと同等と感じており、高卒者では専門性は求められていない実態がある。また自宅通勤のため日雇い派遣に対しては一旦は経験しても通常のアルバイトに戻っている。このように自分の知っている空間の中で、自分の知っている内容の職を得て、「未知の領域」には出て行かない。