- 著者
-
東城 秀人
- 出版者
- 私立白梅学園高等学校
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2011
高校では植物が光合成に利用する光の種類(波長)と光合成色素の持つ特徴とを合わせて学習するが、その指導の中で、光と色の関係においてはスペクトルなど重要な概念は、生物分野ではきちんと教えられているとは言えない。また、光合成色素の特徴として吸収スペクトルを学習する際には、色素の抽出・分離や分光器を用いた吸収スペクトルの実験・観察を行うことが多いが、その後吸収スペクトル(曲線)へは説明だけとなり,実験的,経験的なつながりはない。上記の問題点を解決するためには、生徒が自らの手を使って実験をし、吸収(率)スペクトル(曲線)を描き、その特徴を学ぶことが有効であると考え、本研究では、吸収(率)スペクトルを描くための測定装置(透過率測定用装置(通称「葉さむ君」),反射率測定装置(通称「葉ねる君」))を、LEDとフォトセル(CdSセル)を利用して開発した。これらの装置を用いて各種の葉(ツバキ,イチョウ,ハナミズキなど)の透過率や反射率を測定し、以下の点を確認することができた。(1).緑葉では、スペクトルの青,赤領域(クロロフィルの吸収領域)の吸収率が高く、緑領域の光の吸収率は低かった。しかし、緑もかなりの率で吸収されている。(2).黄葉や紅葉では緑葉と異なり、クロロフィルの赤色吸収領域(光合成機能領域)が著しく低下し、透過率が上昇した。黄葉と比べて紅葉では、新たに合成されたアントシアニンによるものと考えられる緑色領域の吸収が見られた。また、生徒がツバキおよびイチョウの葉(緑葉,黄葉)を用いて、透過率を測定し、吸収(率)スペクトルを描く授業実践を行い、その授業効果を調べたところ以下の結果が得られた。(1).短時間で測定を終えることができ、計算も簡単にできた。実験に対する生徒の評価も良かった。(2).葉の色の変化を含まれる色素の変化と意味づけて考察することができた。以上の結果から、本研究で開発した装置は光合成の指導に十分利用できることが確認できた。